私はどちらかと言うと公共の利益を優先しがちだが、それでも公共の利益のために私権制限することには謙抑的でなければならず、私権制限のためには、私権制限の必要性、緊急性、代替不能性、さらには私権制限による損失の補償措置や私権制限措置に対する不服申立て制度の整備、関係者に対する事前の通知、さらには私権制限の始期や終期に関する定め等が予め明示されていなければならない、という立場に立っている。
今次の新型コロナウィルスによる新型肺炎の発症を契機に、緊急事態における私権制限の必要が強く認識され、憲法に緊急事態条項を書き込むことを検討すべきではないか、という議論が一部で起こっているようだが、私は、国会議員の皆さんがこういう問題に真摯に向き合い、議論を深めて行かれることには賛成だが、結論として、憲法にそこまでのことを書く必要はない、と考えている。
私権の行使をどうやって公共の利益と調和させるか、というのは法律実務家にとっては結構重い課題だろう、というのが私の基本的な認識である。
私自身は、時により、場合により、事柄により、さらには時代によって多少取り扱いを異にすべきかも知れないな、と思っているので、一律にバッサリどこかで線引きしたり、切り捨てたりしない方がいいだろう、と思っている。
今の国会議員の皆さんの議論はかなり雑駁だなと思っているので、今の国会議員の皆さんが、数の力で、エイヤッと決めてしまうようなことには私は反対である。
ただし、イザという時のために、今から国会で大いに議論していただくことには賛成である。
念のため。
編集部より:この記事は、弁護士・元衆議院議員、早川忠孝氏のブログ 2020年2月2日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は早川氏の公式ブログ「早川忠孝の一念発起・日々新たに」をご覧ください。