アメリカ大統領選、序盤から感じること

アメリカ大統領選については11月の選挙までこのブログで時折カバーしていきたいと思っています。それはこれだけの一大イベントに候補者はどう戦略を立て、国民はどうこたえていくのか、二大政党の枠組みの中で本当に全ての国民はYES, NOゲームに満足しているのかなど切り口が豊富であるからです。

トランプ大統領FBより

また、アメリカからスタートする社会、文化、トレンドが日本にも強く影響してきた過去を考えるとこれがアメリカの選挙だという他人事ではなく、いつかは自分たちにも降りかかってくることになるのだろう、と考えています。特に安倍首相の後継者などを考えるうえでこのアメリカ大統領選は大きく参考になることでしょう。

さて、私がトランプ大統領の再選には疑問符をつけているのはご存じのとおりであります。それは私が彼を好きか、嫌いかということではなく、第三者的な国民の反応という点を見てそう感じているのです。

洋の東西を問わず、選挙における投票者は若年になる程、下がる傾向があります。アメリカでも50歳以上の方の投票率は7割ぐらいありますが、30歳以下になると5割を切ります。なぜ、若者はそっぽを向くのか、理由は「私の一票では動かない」であります。この考えに一定年齢層の方はご意見があろうかとは思いますが、それは動かせない事実なのです。

ところがその若者を動かす方法が一つだけあります。それは「絶対に嫌な人」への反対投票であります。この人には嫌悪感を持っているからそれに対抗してくれるあなたに投票する、というわけです。

例えばある会食に呼ばれた時、自分が絶対に嫌いな人が参加すると事前に聞いたら理由をつけて行くのを止めるかもしれません。一方、そこまで好きではなくても許せる仲間なら行くでしょう。つまり、嫌なことへの反応の方がはるかに強く出やすいのが人間の心理なのです。

アメリカでいよいよ民主党候補同士の本格的対決が始まります。アメリカではこの党集会、各討論会ごとの反応調査が発表されるんですが、今のところバイデン氏とサンダース氏が有利な展開をしています。なぜ、社会主義者でほとんど功績もなく年齢も78歳と高齢のサンダース氏がここまで根強い人気があるのか、理論では説明できないでしょう。アメリカが社会主義者を応援するはずがない、と多くの方は思うはずです。

私の見立てはトランプ氏が嫌いだからその真逆への声に人々は興奮しているのだろうと思っています。プロレスにおける正義の味方と悪役の戦いと同じで勧善懲悪に酔いしれている感じでしょうか?特に現役世代は劇場型選挙に入り込みやすくなります。まるでロックコンサートで大騒ぎするのと同じ状態に近いかもしれません。事実、アメリカの選挙の討論会では心理作戦が展開され、人々をその気にさせやすいのであります。

一方、民主党幹部はいくら何でもサンダース氏を民主党候補にするわけにはいかないと考えているでしょう。それゆえ、いずれバイデン氏を盛り立てていく方策を考えていくはずです。バイデン氏は中道左派ですが、トランプ氏との距離を強調しながらもサンダースほど極論に走らないことで現実路線を提示する戦略ではないかとみています。

ところで大金をはたいて選挙戦に臨むブルームバーグ氏の下馬評が上がってきません。一部ではバイデン、サンダース両氏に次ぐ3位争いに入っているという報道もあります。しかし、私はブルームバーグ氏は今回、どこかで降りる気がします。それはカネの力で大統領になるという姿勢そのものが民主党支持者にそもそも合わない発想であり、そんなことで誰も熱狂しないとみているからです。

私も当初、ブルームバーグ氏がニューヨーク市長の経験を生かして政治姿勢をきちんと述べる一候補者なら芽があるし、ウクライナ問題で多少なりとも影響があったバイデン氏をカバーできると思っておりました。ところがウクライナ問題そのものがトランプ氏にもバイデン氏にもアンタッチャブルな案件になったことで、ブルームバーグ氏を持ち上げる理由がなくなったと思っています。

現時点で予想するのははばかれますが、民主党からはバイデン氏が最終的に選ばれるような気がします。彼にとって果たして3度目の正直となるのでしょうか?

今後も大統領選の話題はフォローしていきたいと思います。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2020年2月4日の記事より転載させていただきました。