(古森 義久:産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授)
「中国の新型肺炎の爆発的な拡散は、習近平体制の過剰な独裁が原因だ」──こんな厳しい非難が米国の著名な中国専門家のジャーナリストにより表明された。
米国では、中国の無法な対外行動への糾弾に加えて、習近平国家主席の独裁強化が中国国民を大きく傷つけているとの批判が高まっている。「ニューヨーク・タイムズ」に掲載されたコラムは、そうした批判が保守/リベラルを問わず米国で定着してきたことの例証といえそうだ。
感染者の発見から2カ月も政府が隠蔽
ニューヨーク・タイムズ(1月29日付)は「コロナウイルスが広がり、全世界が中国の独裁体制への代償を払う」という見出しのコラム記事を掲載した。「習近平は自らの強力な支配を感染症の阻止ではなく、情報の統制のために使った」という副見出しがあり、今回の新型コロナウイルスの世界的な拡散が習近平体制の独裁体制と深く関連していることを指摘していた。
この記事の筆者はニューヨーク・タイムズのベテラン記者で外交コラムニストのニコラス・クリストフ氏である。クリストフ氏は中国駐在特派員を長年務め、東京支局長の経験もある。中国に関する著書も多く、米国でも有数の中国問題専門ジャーナリストとして知られる。
クリストフ記者はこの記事で、新型肺炎が急激に拡散したのは、習近平独裁体制の下、感染症についての情報を初期段階で隠蔽したため予防対策に欠陥が生じたことが原因だとし、以下の骨子を述べていた。