新型肺炎で自民党提言:検査キット開発、観光業等支援など

太田 房江

中国で起きた新型コロナウィルスの世界的拡大がとどまるところを知りません。日本国内では6日)点で25名の方々の感染が確認されました(参照:厚生労働省6日発表)。さらに昨日7日朝になって、横浜沖で停泊中のクルーズ船から新たに日本人21人を含む乗客41人の感染が確認されました(参照:NHKニュース)。

正しい情報と冷静な対処

東京、大阪の街を歩いていてもマスク姿の方が日に日に増えているのを実感します。まさに厳戒態勢の昨今ですが、まずは冷静になって、厚生労働省や自治体、感染症専門の医師などの発信を定期的にチェックし、正しい情報をもとに落ち着いて対処したいものです。厚生労働省のホームページにある「新型コロナウイルス感染症について」というページで随時情報が更新されていますので、参考にしましょう。

新型コロナウイルス感染症について

私たち参議院自民党でも5日、独立行政法人・地域医療機能推進機構理事長の尾身茂先生をお招きして危機管理に向けた勉強会を開催しました。尾身先生は、WHO西太平洋地域事務局の感染症対策を担当されたご経験もあります。

自民党としてもこうした専門家の知見を踏まえ、政務調査会で、すみやかに政府への提言を作成し、岸田政調会長から安倍総理に昨日(7日)申し入れをいたしました。

首相官邸ホームページ

提言書の内容は次の10項目です(カッコ内は補足)。

1.    水際対策の徹底
(検疫や健康監視の体制強化、湖北省についての入管法5条に基づく入国拒否措置の迅速かつ機動的運用)
2.    国内の医療提供体制の整備
(新型インフル当時に設置した発熱外来のような仕組みなど)
3.    検査体制の整備と検査キットの開発
(迅速な検査キット開発に向けた官民一体での取り組み推進など)
4.    帰国された方々や在日中国人の方々への適切な対応、希望者の全員帰国
5.    ワクチンや治療薬の開発促進等
6.    感染予防、迅速かつ的確な情報提供、リスクコミュニケーションの徹底
(正確な情報の迅速な発信、十分なコールセンター設置による不安の解消など)
7.    旅館等中小企業対策
(キャンセルが相次ぐ観光業をはじめ、中小企業向けの緊急資金繰り対策など)
8.   感染症対策の政府内の体制整備
(官房副長官補の元に置かれている感染症対策部局の統合・格上げなど)
9.    感染症対策の強化
10.  国際連携のさらなる強化

党としても、政府に対し、今後のさらなる変化を見据えながら、緊急度に応じて順次、早急に具体化していくことを求めて参ります。

インバウンドへの悪影響についての対策

提言の7で中小企業対策を求めていますが、今後は、経済への悪影響を最小限に食い止めねばなりません。

近年、絶好調のインバウンドに支えられてきた大阪でも、今回の影響は目にはっきり見えてきています。先週の日曜日(2月2日)お昼頃のなんばに立ち寄ると、人混みでいっぱいだった高島屋前交差点もガラガラ(写真)。黒門市場では、練り天の天ぷらやさんが「お客さんはいつもの日曜の4割くらいや」とおっしゃっていました。

中国からの観光客は、大阪に来られる外国人観光客の4割を占め、2番目に多い韓国人の倍と際立って多い存在です(※大阪観光局推計)。大阪から足を伸ばして京都に宿泊する外国人観光客の国籍をみても、中国は4年前に台湾を抜いて最多となり、2018年の時点で3割近く。この時点でも台湾の倍となっていました(※京都市観光協会調べ)。

振り返れば、大阪では2年前の9月に大型台風が直撃し、関空が一時閉鎖した際も甚大な影響が出ました。私もあの時は黒門市場を訪れて、いつもではありえない閑散とした様子を目の当たりにし、お店の方々の悲痛な訴えを拝聴し、関係機関に周知、調整をしました。

中期的にはインバウンドの多様化を

ただ、あの時は、私が知事時代に大阪の皆さんと建設に心血を注いだ第2滑走路が生きていたことで立ち直りも早かったのですが、今回の新型コロナウィルスの問題は見通しが全く立っていません。

まずは水際対策、感染拡大防止をしっかり行った上でのことですが、国内の大阪観光需要の掘り起こしも重要です。観光での消費額は、訪日外国人の4.8兆円(2019年・観光庁速報値)に対して、日本人観光客は21.6兆円(2018年・観光庁統計)と、まだまだ格段に高いのです。春休みや卒業旅行シーズンにまで響かないことを祈りますが、状況が許すのでれば、まだ大阪やUSJに来たことがない高校生や大学生の皆さん、いかがでしょうか。

一方、中長期的には、インバウンドの多様化を進めることが今回の教訓になったと思います。幸いにも大阪は2025年に万博を控え、国際的な注目度が上がっています。近年のインバウンド好調の理由は、アジアからのLCCで来られる観光客の増加でしたが、今後はヨーロッパや南米、あるいはこれまで中国に向かっていたタイなど、東南アジアからの訪日客を増やすことなど、多様な地域にもっと働きかけていくべきと考えます。

目の前の感染症対策に万全を期しつつ、景気動向にも目配りして必要な対策を果断に打っていきたいと思います。