もう少し早めに必要な手当てをしておけばよかったのに、と思うが、官邸の対処が甘かったのだろう。
東京高検検事長の定年延長を閣議決定だけで済ませようとしたのは、やはり官邸の手落ちだったろうと思う。
少々焼きが回ってきたのかな、と思わざるを得ない。
法治国家であるはずの日本の法治主義が大分緩んできているのかな、と思わざるを得ないような事態になってしまった。
ちょっと融通無碍過ぎませんか、と申し上げたくなる。
法の解釈には幅があり、時により場合によって法の解釈が変遷することがあり得ることは私も認めているが、しかしながら法の解釈は基本的に安定性と継続性が求められており、他の法規範との整合性も保たれなければならない、というのが私の基本的な立場なのだが、今回の東京高検検事長の定年延長問題についてはどうやら官邸の法解釈に問題があったようである。
検察庁法と国家公務員法のいずれが優越するのか、という法律問題に帰着するのだが、政府は、かつて国家公務員法の定年延長の特則は検察庁法に定める検察官の定年に関する規定に優越することはない、と見解を公表し、現実にこれまではその見解に沿って検察官の定年に関する規定が運用されてきたようである。
この見解が公式に定着していたとすれば、検察官の定年に関する規定を変更するためには法の改正手続きを必要とすることになるはずだが、安倍内閣は、単なる閣議決定で東京高検検事長の定年延長を実行してしまったことになる。
当然無効とまでは言えないが、当該閣議決定には瑕疵があると言わざるを得ないだろうというのが、私の見解である。
まあ、安倍内閣の閣僚である法務大臣としてはなんとか正当化したいところだろうが、余程周到に法律上の論理構成をしないと法律の専門家の方々から侮られることになってしまう。
私自身は黒川弘務東京高検検事長の定年延長には賛成ではあるが、黒川氏の職務執行の万全を期すためには、それなりの備えをされた方がいいと思っている。
まずは、皆さんのお手並み拝見、というところかしら。
編集部より:この記事は、弁護士・元衆議院議員、早川忠孝氏のブログ 2020年2月11日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は早川氏の公式ブログ「早川忠孝の一念発起・日々新たに」をご覧ください。