あなたは、ドイツのカメラメーカー・ライカカメラAG(以下「ライカ」と記す)について、どのような印象をお持ちだろうか?
多くの日本人は、テレビアニメ「ちびまる子ちゃん」の登場人物「たまちゃんのお父さん」が愛用している、ドイツ製の高級カメラのメーカーという印象を持っているのではないかと、私は想像している。
今日は、たまちゃんのお父さんのお誕生日なんだよ、おめでとうー! pic.twitter.com/sx2fRNk170
— ちびまる子ちゃん【公式】 (@tweet_maruko) September 13, 2016
ライカの前身は、1849年に設立された顕微鏡メーカーだった。同じくドイツの高級光学機器メーカーであるカール・ツァイスが設立されたのは、その3年前の1846年。日本の主要光学機器メーカーが誕生したのは、いずれも20世紀になってからだ。
170年以上も続く事業は、世に多くあるものではない。卓越した技術力だけでなく、外部環境の変化に応じて柔軟に事業内容を変化させてきたからこそ、今に至るまで継続できているのだと私は思う。創業者の存命中は高い創造性を発揮した日本企業の多くが、社歴を重ねるにつれ、変化を嫌う「側用人」が跋扈するようになり、次々に没落していった。ライカも、カール・ツァイスも、日本企業の多くとは対照的なのである。
昨年10月13日のこの記事で、私は、新しいコンセプトの製品を3つ紹介した。その1つ目が、米国GoProが市場を開拓した、アクションカムである。この記事では、昨年10月時点のアクションカムの欠点として、イメージセンサーが小さく、ダイナミックレンジが狭いことを指摘し、高級コンパクトデジタルカメラで多用される1インチセンサーを採用したアクションカムをキヤノンが商品化することを提案した。
技術のわからない老害経営者が醜態をさらしているキヤノンからは、私の提案に対し、何の反応もなかったが、なんと、社歴170年を超えるライカが開発したカメラモジュールを搭載した、1インチセンサー採用のアクションカムが、今月末に発売されることになった。
中国・深センに本社を構える、2014年に設立された新興カメラメーカー「Shenzhen Arashi Vision」は、「insta360」ブランドで、360°カメラを中心に商品を展開している。
この会社が今月末に発売する「insta360 one R 1inch edition」こそが、ライカが開発した、世界初のアクションカム用1インチセンサーカメラのモジュールを搭載しているのだ。
BCNが発表した、昨年のカメラ販売台数ランキングを見ると、極めて興味深い現象を読み取ることができる。3位にアクションカムのGoPro 「HERO 7 Black」が、20位にDJIのスタビライザー内蔵ハンドヘルドカメラ「OSMO POCKET」がランクインしている。カメラ市場全体では縮小が続いているが、これは、魅力的な新コンセプトカメラを市場に投入せず、古くさいコンセプトのカメラしか作らない、頭の古い経営者が権力にしがみついているカメラメーカーに、市場が「No」を突きつけていると理解すべきだ。
ライカは、昔も今も、カール・ツァイスや日本の大手カメラメーカーの足元にも及ばないくらい、規模の小さな会社だ。だから、自社単独でできることには限りがある。しかし、世界最高水準の光学の技術を持っているので、上述した「insta360 one R 1inch edition」向けカメラモジュールを開発したり、ファーウェイ製スマートホンの高級モデルにレンズを供給したりしている。
現在、存亡の危機に直面しているとみられるキヤノンとニコンは、ライカを見習ってみてはいかがだろうか?