朝日新聞「福島食材は“きれい”」との復興相発言を韓国に告げ口?

高橋 克己

田中復興相(政府ネットTV)

18日夜の朝日新聞デジタルは、「福島の食材、韓国念頭に“そっちの国より安全” 復興相」との見出しの、田中和德復興相による「福島の食材は安全」などとする発言を報じる記事で、「輸入規制を続けている韓国の態度をさらに硬化させる可能性がある」と書いた。筆者に言わせれば蛇足だ。

韓国への「告げ口」を想起させる相変わらずの論調だなあ、と思っていたら、19日朝の中央日報が、待ってましたとばかりに、「“福島食材、そっちの国よりきれい”…日本復興相、“輸入規制”韓国批判」*との見出し記事でこれに呼応?、日韓両反日紙?が見事な連係プレーを見せた。

「輸入規制を続けている韓国の態度をさらに硬化させる可能性がある」などと書けば、韓国紙も韓国国民への手前、朝日の論調に応えてこれを報じ、(朝日の要望通り?)韓国民の「態度をさらに硬化」させない訳にはいかなくなるではないか。これでは「告げ口記事」といわざるを得まい。

朝日は記事をこう書き出す。(太字は筆者

田中和徳復興相は18日、東日本大震災から丸9年を前にした報道各社の共同インタビューで、福島県産を中心とした被災地の食材が一部の国・地域で輸入規制され続けている現状について、韓国を念頭に「そっちの国より(日本産のほうが)よっぽど安全だし、きれいだ」と述べた。輸入規制を続けている韓国の態度をさらに硬化させる可能性がある。

発言の根拠について、田中氏は「福島の食材は日本の中でも問題はない低い(放射能の)数値だ。韓国の数値も把握している。(日本は)世界中でもっとも厳しい基準をクリアしているものを流通させている」と説明した。

太字部分の蛇足がなければ、発言をそのまま伝えるごく普通の記事だ。記事はこの後に、食品に含まれる放射能の世界各国の基準を書くのだが、それに続く以下の文節が、これまたいただけない。

ただ、世界貿易機関(WTO)の上級委員会は昨年4月、韓国が日本の水産物を全面禁輸していることを容認。その報告書では、各国が独自に安全基準を設ける裁量を認めており、基準の違いによって、それぞれの国の食品の安全性や「きれいさ」に優劣があるとは示していない。

確かにWHO上級審は福島食材を安全としたパネル判断をひっくり返した。が、参考拙稿に書いたように、上級審のそのおかしな判断に異論を呈した国も少なくない。また、今回の新型肺炎に見るWHOやICAOのように国際機関の権威は地に落ちつつあり、そこに言及することもバリューがあろう。

(参考拙稿)

加えて「“きれいさ”に優劣があるとは示していない」と、大臣発言の「きれいさ」を括弧書きで引用強調することにも「朝日の悪意」を筆者は感じる。確かに大臣らしい表現ではないかも知れぬ。が、「きれい」を「清潔であること」のみならず「安全であること」に使うのを誤用とまでは言えまい。

では、呼応?した中央日報はどう書いたか。

田中和徳・復興相は18日の記者会見で、2011年原発爆発事故が起こった福島県の食材輸出問題について「そっちの国よりよっぽど安全だし、きれいだ」と話した。田中復興相は「福島の食材は日本の中でも問題はない低い(放射能の)数値だ。韓国の(食材の)数値も把握している」としながら「日本は世界中でもっとも厳しい基準をクリアしているものを流通させている」と強調した。

括弧書きの引用部は朝日をそのまま引用したかの如く、前段の(日本産のほうが)を除けば一字一句違わない。中央日報は「朝日新聞によれば」と書いていないので、復興相会見を直接取材した可能性もある。が、この発言部の書き方を見る限り、朝日記事孫引きの可能性が高かろう。

なぜなら、それに続く各国の放射能基準値や日本食材の輸入規制、そしてWHOの対応内容など、ほぼ朝日記事と同じ順番、同じ表現で書いているからだ。まさに朝日が蛇足した、「輸入規制を続けている韓国の態度をさらに硬化させる可能性がある」との「告げ口」に呼応したというべきか。

この記事には(編集委員・大月規義)との署名がある。編集委員といえばそれなりの権威がある方と思われる。この種の問題をこういう論調で報道することが朝日新聞社の方針なのであろう、と改めて認識させられる記事ではあった。