新型肺炎で狂いつつある世界経済の減速は想定以上の悪い数字となって表れそうです。倒産劇も出てきておかしくないと思いますが、悪い中で一筋の光明にすがる傾向もみて取れます。そのあたりを今日は見てみましょう。
アメリカ。大統領選を11月に控え、乱戦気味の民主党候補に一筋の光明があるとすればブルームバーグ氏の登場でしょうか?サンダース、ウォーレン両氏の社会主義的思想は既存のアメリカ経済の枠組みをぶっ壊そうとしています。アメリカ人がいくら改革好きだとしても極端な変化をいつも望んでいるわけではありません。その中で中身の判断はまだできないけれどニューヨーク市長経験者であるブルームバーグ氏なら任せられるという光明を感じているようです。
私はあり得ると思います。バイデン氏が失速した今、バイデン氏が下りればその票をブルームバーグ氏が全部とれる可能性すら大いにあります。もともと、私は逆を想像していました。ブルームバーグ氏が下りてバイデン氏に票を献上する、というものでした。しかし、バイデン氏の賞味期限は切れていたのかもしれません。新しもの好きのアメリカ人らしい変わり身に注目です。
最近、注目度が下がっているトランプ大統領がドル高に何を申すか、ここにも光明があります。株価を刺激し、トランプ劇場が作り出す好景気でアメリカ全体を盛り上げるというわけです。パウエルFRB議長は利下げは考えないと述べました。私はそれを受けて強く批判しました。そんな先のことがわかるわけないと。事実、新型肺炎問題で一時は利下げの余地を考えざるを得ない状況に追い込まれます。この次ですが、まだ口には出しませんが、世界経済が落ち込む中、資金がアメリカとドルに流入すればドル高の熱さましをせざるを得なくなるのです。これはテクニカル論とすれば投資家には願ったりかなったりとなるかもです。
中国。習近平国家主席は自身の勢力地図と地位を賭けた対策を行わざるを得ないところまで追い込まれました。1~3月の中国GDPは実勢マイナス成長、統計値3~4%台と私は予想していますが、新型肺炎の新規患者数が減りつつあるところからやはり2月中旬にピークを打った感があります。すでに延期を表明している3月5日開催の全人代ですが、個人的には1カ月程度の延期ではないかとみています。習氏の日本訪問も1~2カ月先送りかオリンピックあとになるのではないでしょうか?
その間、習氏は経済対策を次々と打ち出すとみています。つまり、1~3月の経済統計が悪いのはすでに織り込んだので4~6月の回復劇をいかに演じるか、という話です。そのためには全人代終了後に大型対策が出てそれで一息つく、というのが私の見方。習氏は日本国内に国賓来日への批判の声があることも当然承知しているわけで延期は当然の演出となり、ウィンウィンの結果にするとみています。
日本。実はここが一番わかりにくいのです。アメリカでも中国でも切り口はスパッと見えるのですが、日本は非常にわかりにくいうえに主体性をほぼ無くしてしまっています。日本が政治、経済において世界をリードすることなど今はあまりありません。よって世界で見えるかもしれない光明に期待するという受動的立場にならざるを得ません。
それでも再三申し上げているようにムード第一主義の日本において春にはオリンピックの話題が大きな華となって期待感が盛り上がりそうです。暗いニュースばかり見続けた日本国民もいい加減に「春よ、来い」となるわけで何の対策も打ち出せない政府と日銀ですが、それでも桜の開花と共に変わるかもしれないと思っています。
もっと申し上げると安倍政権の次が誰になるか、という盛り上がりも出てくるとみています。安倍さんはもしかしたら一期、長すぎたかもしれません。他に誰がいるのか、という議論は確かにありますが、これ以上かみしめても味がしないビーフジャーキーと同じで、ドイツのメルケル首相と似た状態にあるとみています。
2020年代の日本をどう設計していくのかについては、次の首相に期待するのではなく、国民がこれからの日本を大議論の中で作り出していったらよいでしょう。もはや、政治家にも官僚にも期待をせず、自分たちで作り出す日本、と考えればこれは大きな光明ではないでしょうか?
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2020年2月21日の記事より転載させていただきました。