前のエントリー(編集部注・アゴラ末転載)にて、私の3月の講演が中止になったことをお話しましたが、そんなことよりも深刻なのは3月の定時株主総会(12月決算会社)ですよね。ご承知のとおり、6月総会に次いで3月総会の上場会社は多いわけでして、今年3月に定時株主総会の開催を予定している上場会社は447社に上ります。
約450社の上場会社は、新型コロナウイルスの感染の恐れによる自粛ムードが高まる中で、本当に定時株主総会を開催できるのでしょうか?もちろん「不要不急」の会合ではありませんので、今後、法務省から「総会延期には正当理由あり」といった措置が公表されないかぎりは、開催を前提として準備するのが当然かとは思います。
でも、このご時世、株主の方々にご参集いただくことって、少し躊躇しませんかね?
実際、総会指導をされている同業者の方がSNSでおっしゃっていましたが、株主と対面する会社役員の皆様は全員マスク姿で登場すべき、議長をはじめ、マイクで発言する役員は、発言の前にはかならずマイクの消毒を行うこと、また、株主の皆様が発言する場合にも、かならず各株主の発言前にマイクの消毒を怠らないこと等、おそらく「危機対応型株主総会」の開催となりそうです。
ところで、名古屋ウィメンズマラソンが「代替オンライン」による開催に変更された、という記事に触れて、「もう少し早く、バーチャル株主総会の運用指針が出ていたら」と、ふと思いました。2月7日に意見公募が締め切られた「ハイブリッド型バーチャル株主総会の運用指針」のことです。
ある会場でリアルに株主総会を開催しているのですが、そこに株主はネットで出席して、質問をしたり、議決権が行使できます(正確にはハイブリッド出席型バーチャル株主総会)。これなら不特定多数の集まる会合はできるだけ控えて…といった風潮のときでも安心して株主総会が開けそうです。
ちなみに、このハイブリッド出席型バーチャル株主総会は、現行会社法上でも運用可能とされています。ただ、昨年のアドバネクス事件判決からの教訓かもしれませんが、「なりすまし株主をどうやって見分けるのか」とか「先に委任状や書面投票を済ませた株主の参加をどうするのか」とか、ネット出席株主の権利行使に対する解釈上の問題点がありますので、もめそうな株主総会には向かないかもしれません。ネット環境が脆弱で、途中でネット回線が中断した場合なども、決議の取消事由に該当する可能性があり、ちょっとこわい気がします。
株主との対話促進が要請されている時代を想定した株主総会の在り方が模索されているわけですが、このような社会状況にも活用できるとなりますと、ぜひ先進的に指針を活用する企業が出てきてほしいと思います。
編集部より:この記事は、弁護士、山口利昭氏のブログ 2020年2月21日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、山口氏のブログ「ビジネス法務の部屋」をご覧ください。