市議会議員からみたバラマキ政策「プレミアム商品券事業」始末記

高橋 富人

内閣府プレミアム付商品券特設サイトより:編集部

昨年秋、全国の基礎自治体で、一斉に「プレミアム付商品券事業」が実施されました。

本件、予算はすべて国が支出している事業です。

ちなみに、本事業に関する国の平成31年度予算の総額は1,723億円。30年度の補正予算に計上されている96億円を足し合わせると、1,800億円を超えるプロジェクトです。

本事業は、消費増税による低所得者の皆さま等のいわゆる「痛税感」をやわらげる等の目的のため、対象者中申請者に「25,000円分の商品券を20,000円で購入」してもらう、というもの。

私の地元、千葉県佐倉市でいえば、スーパーから床屋さんまで、だいたいどこでも使える「ほぼお金と同じ」機能を持つ商品券であるといえます。その商品券2万5千円分を、2万円で買ってもらえば、購入者は5千円分お得ですね、と…。

さて本事業、佐倉市単体でみた場合、総予算は約2億8,300万円。そのうち、対象者への事業告知や券面印刷などのいわゆる事務費は約1億1,530万円ということで、事務費で半分が使われる想定という、まったくどうかしちゃってる事業です。

なお、「半分が事務費」という状況は、制度設計上仕方がないことです。つまり、制度を設計した国に責任があります。

そもそも、消費税アップという「永く続くであろう」政策に対して、たった一回低所得者等の方に5千円のお得を提供することに、いったい何の意味があるのか?

詳細は割愛しますが、私はこのようなバラマキ政策には反対ではあったものの、国の予算がついている以上、やらないと佐倉市民の対象者に不利益が生じるため、泣く泣く佐倉市での実施については「賛成」をした、という経緯があります。そのあたりの私の意見については、昨年5月に書いたこちらの記事をご覧ください。

【拙ブログ:2019年5月16日】臨時会:「プレミアム付商品券事業」に関する審議

さて、本事業について、今回の2月の佐倉市議会で、歳出の大幅なマイナス補正がかかったので紹介いたします。

魅力もなかったプレミアム商品券事業

「歳出のマイナス補正」というとこれまたややこしいのですが、この場合は「予算はとったものの、やっぱり使いません」という修正、という意味です。

佐倉市では、なんと約1億4,600万円を「やっぱり使わない」ことになった。実に、本事業の予算の約半分です。

そこで、佐倉市での対象者への給付率を聞いたところ、なんと41.5%とのこと。つまり、ざっくり40%程度の対象者しか、「プレミアム商品券」を購入しなかったということです。

ちなみに、前回の増税の際は「プレミアム商品券」ではなく、申請ベースで現金給付をするという建付けだったそうですが、佐倉市では80%以上の対象者が申請し、給付を受けています。

以上から、私なりにこの事業をまとめると

  • 消費税アップに対してたった一回お金を撒くような事業は、単なるバラマキ政策だから金輪際やめるべき
  • バラマキでも、実施する以上対象者に極力行き渡るような魅力ある事業であるべきだが、佐倉市での給付率はたったの41.5%(他市の状況をぜひ知りたい)
  • 半数以上の対象者に無視される事業のため、対象者への事前告知物郵送、商品券の券面デザイン、印刷費、配布事務等に多額の税金と全国の市職員のリソースを使ったことについては、本事業を推進した国政政治家にしっかりした総括の公表をしていただきたい

というところでしょうか。

本事業の予算約1,800億円は、ご存知のとおり税金です。

税金や公務員のリソースは、意味のある事業に使っていただきたいと、切にお願いしたいところです。