今朝(2月26日)の日経朝刊5面では「政府、新成長戦略に明記-事業再編促進へ指針」との見出しで、企業のデジタル化、グローバル化に対応して、政府として事業再編を促進するための指針を策定することが報じられていました。具体的には(未来投資会議における議論を通して)東証コーポレートガバナンス・コードの実務指針の形でまとめて、経営陣や社外取締役の判断基準として活用されることが予定されているようです。
「経営陣と機関投資家の対話ガイドライン」はコードの附属文書という位置付けでしたが、「企業統治指針」の「実務指針」という位置付けなのでしょうかね?(指針の指針?なんかややこしい・・・)
ともかく、狙いを定めた上場会社に対して事業再編を迫るアクティビストファンドにとって、またひとつ有力な武器を手に入れることができるわけで、「ガバナンス改革3.0」(全上場会社にルールを適用して、望ましい方向に動かすだけでなく、ピンポイントで特定の上場会社に狙いを定めて、投資家にとって望ましい要望を出し、応じなければ「見せしめ」として損をさせ、恥をかかせて、その脅威によって他の上場会社を動かす、いわゆる「ポピュレーション・アプローチからハイリスク・アプローチへ」)の方向性は揺るがないものと予想しております。
実は、この「企業統治3.0」の流れが進むなかでの会社の有事(とりわけ株主総会、取締役会における有事)において、監査役、監査等委員(監査委員)の皆様が、どう対応すべきか・・・というのが(私が講師を務めます)今年の日本監査役協会におけるリスクマネジメント研修の「設例1~設例12」だったわけですが、すでに告知のとおり、大阪2会場以外の5会場分が中止となりました(*´Д`)。
これ、上場会社の取締役、監査役の方々にとって、ものすごく重要なポイントだと思うのです(裁判規範ではなく、行為規範として会社法が「上手に」活用されるようになった意味は大きい)。
前にも述べましたが、昨年末のM&Aonlineの調査結果によりますと、上場会社に対する「敵対的買収」の勝敗について、2000年~2013年の13年間は、買収者側が3勝11敗でしたが、アベノミクス以降(2014年)~2019年には6勝3敗のようです(私が図表をもとに集計)。
ブルドックソース事件最高裁判決の時代(2007年)とは、上場会社を取り巻く経営環境は大きく変わりました。社外取締役さんに本気で活躍してもらうためにも、事業の撤退や売却に関する社内ルールは明確にして、さらに開示することが、今後は普通に投資家から要求されるようになるのかもしれませんね。
なお、次回のエントリーでは、上記のような「企業統治3.0」の問題意識にピッタリの新刊書が商事法務さんから近日出版されるそうなので、コッソリご紹介したいと思います。どうかご期待ください(ちなみに私の著書ではなく、大手法律事務所の皆様が執筆されたものなので、安心して読めますよ)。
編集部より:この記事は、弁護士、山口利昭氏のブログ 2020年2月27日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、山口氏のブログ「ビジネス法務の部屋」をご覧ください。