人気失速の小泉大臣、「仕事で返していく」が当分無理なワケ

小泉大臣のことを批判するのにはいささか勇気が要る。というのも、筆者のようなゴリゴリの保守でコチコチの頑固ジジイは今どききっと少数派だと思うからだ。と思っていたら、満更そうでもないらしく、25日の大臣会見では産経の記者からこんな質問をされていた。

世論調査で小泉さんの支持率が、次期総裁になってほしいという方が、昨年4月に25.9%あったんですけれども、今回2月の調査では8.6%と急落をしました。・・今回こういったことになり…どういった受け止めをされているか、お伺いできればと思います。

これが「仕事で返していく」との記事になったのだが、“当分無理ではないか”とその会見の要旨を読んで筆者は思った。なぜかといえば、彼は潔くない(“女々しい”と書きたかったが、少々日和りました)。本稿は25日の会見の中身を書くが、その前に彼の大臣就任以降の出来事をおさらいしておく。

25日の小泉大臣会見(環境省YouTubeより:編集部)

先ず福島の原発処理水。原田前大臣の“潔い”発言を詫びに福島に行くという彼に、ちょっと待てとの思いで拙稿にした。処理水の海洋放出が理に適っていることは、訪日中のグロッシIAEA事務局長も26日に述べた政治家の仕事は、風評が起きないようにすることであって、福島漁業者のご機嫌を伺うことではない。一刻も早く、日本沿岸の内水にぐるっと放出してもらいたい。

次にレジ袋廃止。これも廃プラによる海洋汚染防止に何の役にも立たないと書いた。が、彼はそういう“空気”を作りたい、とのたもうた。“空気”といえば育休の取得も“空気づくり”らしい。が、小泉父にすら“黙ってやれ“と諫められる始末。

億の持参金もあるのだから子守を雇えば済むではないか。奥方に愛情のあるところを見せないと何か不味いことでもあるのか、とつい勘ぐってしまうが、そこは税金で禄を食む公僕だ、仕事を休ませるような奥方なら“三行半”を突きつけたらどうか(筆者の勝手な想像です)。

“三行半”といえば先日のサボリも同根。地元の新年会に出るため新型肺炎の政府対策本部会合を欠席した件だ。代理出席させたから問題ないなどと釈明し、予算委員会でもさっさと認めて謝罪すれば良いものを、「委員ご指摘の通り」との答弁を何度も繰り返して、貴重な時間を浪費した。この時期に欠席を難じるような支援者なら、それこそ“三行半”でも突きつけよ。

前置きが長くなったが、ベトナムの石炭火力発電「ブンアン2」絡みでの「4要件見直し」の話。この件では1月21日にも大臣会見があり、筆者も「・・小泉大臣発言は頼もしい」などと書いた。が、どうも彼の冗漫な会見の要旨を読み違えたようだ(どうりで同稿は“ゼロいいね”の珍記録)。

同稿に「産経もこの会見発言を『“出資は日本、建設は中国。おかしい”小泉環境相が海外支援案件に異論』と報じた」と書いたように、彼の異論は“出資するなら日本製を使わせよ”との意味だと筆者はてっきり思い込んだ。が、そうではなくて“石炭火力の輸出自体をやめよ”が真意だったようだ。

石炭火力発電所「ブンアン1号」(ベトナム・ハティン省サイトより:編集部)

そして25日にも再び“ブンアン2”に関する大臣会見があった。会見要旨は1月のも今回のも共に四百字詰め原稿用紙26枚分もの膨大な量だ。このことからして、彼の発言がどれほど解かりにくいか、つまり、「何を言いたいのか解からない」ことの証左といえまいか。

以下の質問(筆者が要約)を順に読めばそれが腑に落ちよう。

  • 朝日・・4要件の何を見直すことを目指すのか、基本的に厳格化するという方向でいいのか、その当たりをはっきりしてほしい。
  • 毎日・・その輸出政策、主管は経産省であったり、JBICは外務省だったり財務省が主管だと思う。環境省が音頭を取ってやるのはそもそも制度として可能なのか。
  • 時事・・特に4要件のどこが大臣として課題だと思われているか、またそれを厳格化することによって全面撤廃のような形に繋がるのか。
  • 時事・・更に効率が高いという条件の下でないと輸出ができないっていうような、そういう方向に持っていくっていうことか。
  • 産経・・4要件の見直し議論はどういった場で行われて、どんな省庁が参加されるのか。
  • 産経・・4要件の議論は各省庁間で従来からやってきたと思うが、COP25の前にももちろんやられておられたし、具体的に何がこれから異なってくるのか。
  • NHK・・問題提起されたブンアン2に関しては、必ずしもその4要件に合致していない訳ではなく、解釈の問題でもあったのかなと思っていて、日本のプラントではなかったということに関しては。今回の4要件の見直しは、日本のプラントじゃない場合にはしないとかそういう見直しになるのか。
  • NHK・・COP25でも議論になったが、輸出だけではなくて国内の石炭火力政策の批判があると思うが、一方で少し問題をすり替えているような思いも感じられ、輸出に注目するっていう点に関してもし大臣の思いがあれば。
  • 読売・・もう石炭はもうやめますと言っている国際社会で、4要件見直しの議論を始めると、厳格化ということになったとしても多分じゃあ国内どうするんだという反応もあると思う。今回のそういう決定、方向性をどういう風に国際社会に発信していこうとお考えか。
  • TBS・・ブンアン2について確認ですが、ご説明ですと政府間合意があったので続行ということと思うが、問題提起の中では、設備が日本のものじゃないというのがおかしいんじゃないかというのと、日本の高効率石炭火力の要請っていうところに合致しないというご指摘だったと思うが、今回の判断は、ハイレベルな設備で日本側が運営するのであればクリアできるという判断の下で、続行ということになったという理解でいいか。
  • TBS・・ブンアン2に関しては間に合わなかったが、新しい案件に関しては4要件を見直して、より良いものにしていくという判断をしたという理解でいいか。
  • 朝日・・現実には動いているブンアン2を含めて4つくらい(案件が)あると思うが、全て容認というような考えでよろしいか。それで今度見直ししたのは、それ以降にという風に考えればいいか。
  • 毎日・・4要件を議論した結果、見直さないという結論はあり得るのか。
  • 朝日・・今回問題提起に至った一番大きな原因は、COP25等で国際社会の最前線に立って、日本への批判を身にしみて受けたから今回の提起に至ったのかということの理解でいいのか。

これほど繰り返し念を押されるのは、大臣の話が明快でないからだろう。ブンアン2や答弁の詳細は拙稿や環境省サイトでお読み願うとして、彼の4要件見直しの真意が、“日本の世界に冠たる優れた石炭火力発電を、それを必要とする国々に輸出するためではない”ことがようやく判った。

その小泉大臣の答弁には「国際社会」なる語が頻出する。

  • 国際社会から石炭火力の批判に覆われて、先進的な取組が伝わらない形で、大臣を送り出すようなことは、私はあってはならないと思います。
  • COPで国際社会の最前線に立った経験、すべてが今つながっていると思いますね。
  • 国際社会において、日本の中で石炭に関する批判の中でも、強い批判のひとつは日本と途上国に対する石炭輸出に対する批判です。
  • この4要件が一言一句変わらずそのままで見直しについての議論をしましたという結論が出たなんて、それこそそんな恥ずかしいこと国際社会に言えるわけもない
  • あれだけ石炭批判を国際社会で浴びせられ続け、かつて環境先進国だった日本が、今では環境先進国として見られていない。

しかし、安価な石炭火力はCO2排出が多いからダメ、CO2を出さない原発は危ないからダメ(小泉大臣の原発観を筆者は知らないが)で、その国際社会は、2050年にはサハラ以南やインド周辺国の人口増で100億を超えるという地球の人々にどうやって電力を供給しようというのだろうか

国際社会との協調は大事だが、小泉氏が政治家であるはずのこの先数十年の日本の国益が、石炭火力や原発抜きに得られるとはとても思えない。彼にはこの種の難問に地に足をつけて取り組む政治を志して欲しい。が、筆者のようなコチコチの頑固ジジイは、今どききっと少数派なのだろう。