ようやくと言うべきだろうが、国が全国の学校を休校にするという思い切った手に出た。もっと早くすべきだったと思うが、批判だけでは国難は乗り切れない。
しかし、医療現場でのもっと重要な課題は、コロナウイルス遺伝子検査が受けられないことだ。咳が出て、発熱があって、倦怠感が強くても、検査にはたどり着けない。テレビで、診療所の先生が相談センターに電話したがつながらないと、嘆いていた。
何かをしていますというポーズでは、済まされない現実が目の前にあるのだ。がん治療で、患者申し出制度を作ったと、政治家向けに説明したものの、がん患者を救うことにはつながらず、ほとんど実態がないのと同じだ。感染者は水面下で広がっていると多くの人が言っているが、私もそう思う。クラスターとかなんとか、訳の分からないことでごまかしている状況ではない。
PCR検査も1日4000件近くできるはずだが、実態は1日1000件にも満たないと報道されていた。保険診療になっていないのでできないという報道もあったが、アホかと思う。命を救うために何をすべきなのかを考えるのが国の責任ではないのか?マニュアル順守、標準療法順守を叫んでいる腫瘍内科医の姿にダブって見えてくる。こんな血の通わないことを考えているから、非常時でも頭が硬直化しているのだ。
保険診療でPCR検査ができるかどうかの問題ではないはずだ。国民の健康と国の名誉がかかっている時に、法律を作ればいいのではないか?他にも方法があるはずだ。野党も、この事態を乗り切るための建設的な案を出せばいい。私ならば、桜よりも、検事の人事よりも、コロナウイルスを優先して国難を乗り切り、男を上げるように尽力する。
当面の課題は、必要な患者に必要な検査を提供する方策だ。持病のある方を病院に近づけない方策は取られているようだが、感染している肺炎患者を捕捉する体制にはなっていない。どちらかというと感染している人を見つけないために、検査を抑え込んでいるような気がする。実態の把握亡くして、コントロールできるはずがない。
一昨日、イギリスのバビロンヘルス社の方と2時間近く会議を持った。オンライン診療をして、医師に診療を受けるべきかどうかを振り分けているシステムを作った企業だ。人工知能に必要な情報を覚えさせて、人工知能アバターがまずは対応して、医療機関を受診すべきかどうか、そして、必要ならば、近くの医療機関を紹介できるような仕組みを盛り込めばいいのだ。
電話窓口と言っても、十分な対応ができる人材を急に確保できるはずがない。オンラインシステムを突貫工事で作業すれば、多くの方の対応ができ、受け手となる医療機関ともスムーズに連携できるはずだ。そうすれば感染を最小限にすることができる可能性が生まれる。
といっても、AIが相談の窓口に立って、だれが責任を持つのかという声が聞こえそうだ。相談できなくて困っている間に、悪化すればだれも責任を取らなくてもいいのか?人海戦術という発想ではもはや対応は無理なように思う。
編集部より:この記事は、医学者、中村祐輔氏のブログ「中村祐輔のこれでいいのか日本の医療」2020年2月27日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。