Abexitへの道 安倍会見はダメ会見

常見 陽平

安倍首相の会見が行われた。皆さんはどのように捉えただろうか?

自民党の参議院議員松川るい議員のツイートに激しく胸を打たれた。あの会見からここまで読み取るとは。素晴らしい読解力と当事者意識だ。プロフィールにご丁寧に中学校からの学校歴、経歴が記載されており。四天王寺中高→東大→外務省の読解力は半端ない。あっぱれ!札幌市立藤野中→札幌南→一橋大学では太刀打ちできないレベルの違いを感じた。あっぱれ!

なんて、私が、思うわけが、ないだろ。
世の中にはあの会見をここまで好意的に読み取る、世間では高学歴、エリートと呼ばれる方がいることを知り、大変、勉強にはなったが。

いかにも反自民、アンチ安倍が何にでも噛み付いているかのように見えるかもしれないが、一応、企業で広報担当者をやっていた視点で批評する。リスク対応という観点から言うと、不十分と言わざるを得ない。この件について「リスク対応」と書いただけで、ネトウヨの皆さんは「コロナは日本発じゃないだろう」と批判してくるが、国がリスクに向き合っているという事実は変わらないのでスルーする。

リスク対応の基本は、事実を可能な限り客観的に共有すること(原因、範囲、影響など)、その対策とそれが最善の選択であるという理由を述べる、さらには想いを伝えることだ。この点において十分だったか?

もっとも「客観的な共有」に関しては、そもそも政府が情報を的確に把握しているかが問われる。そもそも政府の現状把握が十分か?国民を不安にするだけだ。休校の件も助成金の件もより具体的に説明するべきだった。

企業における経営陣の不正、個人情報の漏洩、業績悪化などの会見では、これをちゃんと押さえる。芸能人の不祥事では、事実が開示されないこともあるが、その分、想いを伝えている。

芸能人の闇営業、不倫、覚醒剤の謝罪会見の方がマシとツイートしたら、安倍応援団の方から「犯罪とは違うだろ」と突っ込まれたのだが。いや、コロナウイルスそのものは安倍がつくったわけではないでが、対応においては人災だという指摘もある中、それくらいの対応をしないと。日本という国の評判にも関わる。

正直なところ、事実の開示、対策の合理性が弱いものだった。「断腸の想い」「私の責任」「私の判断」と言われても、伝わる人にしか伝わらない。この言葉そのものの信頼性が問われる。

「先手先手」と言われても、世間ではこれを「後手後手」という。その意味も閣議決定しそうで怖いのだが。「早急に」「先手先手で」と言うなら、この場で具体的に対策を開示するべきだった。

別にスピーチライターがいても、プロンプターを使ってもいい。それは誰でもやっている。ただ、使う場合は、覚えなくてもいい分、想いを伝える。

リスク管理セミナーの教材に使われそうな、ダメ会見だった。Abexitの流れは進むだろう。Abexitとは、別に安倍政権への支持・不支持に関わらず、向き合うべき課題なのだ。

WHO調査報告書 症状の特徴・致死率など詳しい分析明らかに(NHKニュース)

コロナに関してはWHOの新見解も発表されている。子供の感染例は少なく、症状も軽いとのこと。しかも、子供から大人には移らない可能性が高い、と。

政府の対応は適切だったのかがますます問われる。Abexitのその日に備えよ。


編集部より:この記事は常見陽平氏のブログ「陽平ドットコム~試みの水平線~」2020年3月1日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。