安倍政権の対中融和策、米国の基本戦略と大きな溝 --- 古森 義久

アゴラ

(古森 義久:産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授)

「軍事力を大増強することで民主主義を否定し世界制覇を目指す中国は、米国にとって最大の挑戦者となった」──米国政府の国防長官と米軍統合参謀本部議長が2月26日の議会証言で、中国の軍事的脅威と対決する米国の基本戦略を強調した。

中国が新型コロナウイルスの感染拡大への対応に苦慮しているが、以上の発言から明らかになるのは、米国は中国を最大の脅威とみて敵視する厳しい姿勢を保ち続けているということである。その状況で日本が中国への融和政策を進めるとなると、米国との摩擦も不可避にみえてくる。

中国は「米国にとっての最大の挑戦者」

トランプ政権のマーク・エスパー国防長官とマーク・ミリー米軍参謀本部議長は、2月26日の下院軍事委員会の公聴会でともに証言した。同公聴会は、米国政府の2021年度の国防費支出権限法案を審議するために開かれた。同年度の米国の国防費は総額7054億ドルという巨額の予算が計上されており、エスパー長官とミリ―議長はこの国防予算の必要性を証言した。

同長官、同議長ともに現在の米国の安全保障にとっての最大の脅威は中国であり、中国を抑止するための軍事力の大幅増強が欠かせないことを強調した。まず、エスパー国防長官は次のような骨子を証言した。

・米国の国防態勢の最大の対象は中国である。なぜなら中国は軍事、経済、外交の力を使って世界の力の均衡を変え、国際秩序を自国にとって有利になるよう再編成しようとしているからだ。米国にとって中国こそが軍事面、防衛面で最大の挑戦者として対峙する相手なのだ。

・中国は軍事の近代化と拡大という目標の下に、宇宙空間、サイバー空間、電子戦、水中戦、戦闘機、爆撃機、長距離ミサイルなどの各領域に国家資源の膨大な部分を投入し続けている。また、台湾有事などへの米軍の介入を阻む「接近阻止・領域拒否(A2/AD)」の能力も強化している。こうした動きは、中国共産党指導部の「2049年までに世界最強の軍事力を築く」という目標のためである。

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