米国立アレルギー感染症研究所ファウチ所長は新型コロナウイルスの致死率が、中国を含めた国際的なデータでは約3%であるが、ウイルス感染しても症状が出ない人もいるので、感染者はさらに多いと試算し、致死率は約1%であろうと述べていた。
しかし、これでも季節性インフルエンザ(毎年起こっている冬季のインフルエンザ)の10倍だという。日本では毎年数千人がインフルエンザで亡くなっているので、感染者数が拡大し、インフルエンザと同じレベルまで広がると、単純計算では数万人が亡くなることになる。
その一方、イタリアでは、12,000人強がコロナウイルスに感染したと確認され、うち827人が死亡している。現時点の数字で計算しても、約7%になる。12,000人の中に治療中の重症患者もいることを考えると、とても1%ではおさまらない。医療体制には限界があるので、重症者に万全の医療を提供し、かつ、感染の拡大を防ぐことが求められる。感染が見つかれば隔離する方法では、対応できなくなる日も遠くないように思う。軽症者にどのように対応するのかといった指針作成が急務となる。
余波によって生ずる経済的な対策が練られているが、検査体制の整備を含めて、感染拡大を防ぐための施策がもっと必要ではないのか?テレビで総理が国民の不安を和らげる説明が必要と言っていたが、真に必要なことは、事実を伝え、それに毅然と立ち向かう姿勢を示すことではないのか?多くの国民が現在の検査数が十分でなく、真の感染者数を把握していないのではないのかと疑義を抱いている。
厚労大臣のPCR検査可能数と発表した数字と、実際に検査を実施した数(1日1000人前後)には大きな乖離がある。そして、感染している人が、直接かかりつけ医や近くの病院の一般外来を受診することを回避することが必要だ。外来には、多くの持病持ちがいるのだから、ここで感染すると事態は重篤だ。医療従事者を守るためにも、これは極めて重要である。
クラスターを抑えることだけでなく、実態を把握することも不可欠だと思うのだが、医師が検査が必要だと考えても、検査を受けることができない例が今日も紹介されていた。通勤電車で、咳をしている人がいる中で、マスクをしていない人の姿が目立った。何だか、とっても心配だ。
編集部より:この記事は、医学者、中村祐輔氏のブログ「中村祐輔のこれでいいのか日本の医療」2020年3月12日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。