最近芸能人が薬物事件で逮捕されるたびに「元マトリ(厚労省麻薬取締官)」と名乗る人々が嬉々としてテレビショーに出まくり、ことさら大げさに偏見を煽っていることに危機感を感じています。
ご存知の通りこのところ沢尻エリカさんや、槇原敬之さんといった、はたから見るとかなり強引なムリ目な逮捕が続いていて、まさに国連が2019年3月に発表した10年間の薬物政策の知見をまとめた「薬物問題に関する国連システム共通の立場の実施に関する国連システム調整タスクチーム」にあるように、
薬物の使用や所持を医学的・科学的な目的以外の目的で個人的に犯罪化することは、薬物使用者の病気のリスクを高め、HIVの予防や治療に悪影響を及ぼす可能性がある。それは、汚名と差別、警察による嫌がらせ、恣意的逮捕を増やす可能性がある
という状況になっています。その証拠に日本は国連から度々勧告を受けています。
マトリは警察ではないですが、違法薬物問題に関しては警察と同じような権限を持っており、警察と手柄を競い合っています。そしてここ最近の元マトリによる自分たちをヒーロー化した自画自賛演出を見ていると、自分たちのセカンドキャリアのために、こうした芸能人逮捕に躍起になっているように思われます。
私が、気がついただけでもここ1ケ月2件の仰天するような番組があったので、ここに報告しますね。
1件目は2020年2月20日(木)放送のテレビ東京「じっくり聞いタロウ」です。
番組に出演した元マトリ廣畑徹氏は、自分が過去に逮捕した有名人の名前を誇らしげに次々挙げたうえで、
芸能人だと末端の使用者でありながらすごく報道されるので、それに乗じて薬物の啓発や宣伝をしていこうということで、年に1、2回は捕まえる。
という、驚くべき発言をしたんですね。ってことはですよ、マトリでは芸能人を見せしめにするために、ノルマが決まっているってことじゃないですか!
芸能人であろうと誰であろうと、誰かを見せしめにして良いわけないですよね。
あまりに傲慢かつ人権を無視したマトリの発言。
それをなんの躊躇もなく放映する地上波テレビ局。
そもそも日本の刑法はそのような概念で作られてなどいません。
そして2件目は、日本テレビ「ヤバい話しをマンガにしてみた」です。
この番組では、麻薬取締官を「マトリーマン」というスーパーマンにしたて、芸能人の薬物問題をマンガにしたてているのですが、その解説に元マトリの高濱良次氏が登場しています。
その中で「芸能人逮捕の裏側」と題して、芸能人に家宅捜索をして、物証も出てこない、尿検査もシロとなった時には、「こっちは証拠が揃っているんだ!」と詰め寄り、自白に追い込む!というものなんです。
これって違法捜査では?ゴーン氏も真っ青…って感じですよね。
こんなことを誇らしげに語るマトリもマトリですが、このことに疑問も抱かない日テレのリテラシーの低さにも驚きました。
厚生労働省の監視指導麻薬対策課は、一体退職時の教育をどのように行っているのでしょうか?
そもそも麻薬対策に必要なのものとして、再犯防止策は重要な課題であるはずなのに、自分たちの手柄を嬉々として語るために、違法薬物問題を抱えた人を貶めるという手法を使っていること自体が、再犯防止を阻害する大きな要因となっていますよね。
どんなに頑張って薬物を止め続けていても、社会から偏見の目で見られたのでは、再犯するしかない状況に追い込まれ、ドラッグコミュニティしか居場所がなくなります。
「じっくり聞いタロウ」の件は、依存症問題の正しい報道を求めるネットワークから、是正を求める書面を準備したので、本日付で関係各所に送付する予定ですが、次から次へとリテラシーの低い番組をテレビ局が放映するのでキリがありません。
地上波テレビの低俗化はもう止めようがないところに来ていると思うので、まずは厚生労働省の監視指導麻薬対策課による、退職者に対する人権教育の徹底を求めたいと思います。
最後にもう一つご紹介したいのですが、なんとですね元関東信越厚生局麻薬取締部長という重職にあった瀬戸晴海氏が最近「マトリ」というご著書を出されたんですね。その本のコピーが「俺たちは、猟犬だ!」ですからね…
マトリがいかに薬物依存で苦しむ当事者や家族を人間扱いしていないか推して知るべしです。