メキシコのカルテルで最大勢力に成長し、また最も狂暴なハリスコ・ヌエバ・ヘネラシオン(CJNG)のリーダーはネメシオ・オセゲラ・セルバンテス(エル・メンチョ)の息子ルベン・オセゲラ・ゴンサレス(エル・メンチト、30歳)の身柄が2月22日、米国に送還された。父親のエル・メンチョよりも先に捕まった。
息子ルベンを出来るだけ早く米国に送還させるという合意は、昨年12月にアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール大統領(アムロ)と米国のウイリアム・バー司法長官の間で交わされた。勿論、その合意の中には父親のエル・メンチョも早急に逮捕して米国に送還するということも含まれている。
シナロアのエル・チャポが昨年終身刑に処せられたことに続いて、次の麻薬王とされているエル・メンチョも年内に逮捕して米国に送還させるというのが米国が望んでいることなのである。
アムロが米国からの送還の要請を容易に受け入れた背景には、この親子の送還が遅くなるとトランプ米大統領はカルテルをテロリストの中に加える用意があると迫っているからである。そうなると、米国はカルテルの撲滅だと称して必要時に米国軍がメキシコ政府の許可なく両国の国境を越境してメキシコに進入できるようになるからである。
これを避けたいとして、アムロはカルテルの撲滅に米国と協力して行くことを約束。その取り決めの具体化がアムロとウイリアム・バー司法長官の間で交わされた合意である。
ルベンは2014年1月に逮捕されたが、証拠不十分で10月に釈放された。今度はその翌年7月にハリスコ州の都市サポパンで逮捕されたが、ひと月後にまた釈放になりそうだった。その時、米国ワシントンのコロンビア地区の法廷から武器の不法所持とコカインとメタンフェタミンの米国での配給を共謀したという容疑をメキシコの検察が受けいれて新たに公判となった。彼は2007年から10年間多量のコカインとメタンフェタミンを米国に密輸していたということだ。
また、武器についてはメキシコのエリート・コマンドが彼を逮捕した時には「CJNG 02 JR」「Menchito」と刻まれた自動小銃AR-15 を所持していたそうだ。検察の調書でもルベンは父親に似て乱暴で故意に武器を誇示して容易に使う傾向にあることが報告されていた。(参照:univision.com)
逮捕されてから刑務所は2か所変わった。米国への送還まで8カ月を要した。
弁護側が送還を遅らせるようにあれやこれやと戦術を変えて来たからである。米国への送還を遅らせようとした戦術のひとつに被告ルベンはエル・メンチョの息子ではなく誤って逮捕されたのだと弁護側が主張していた。弁護側の説明によると、ルベンはサンフランシスコで生まれて29歳になるが(現在30歳)彼の両親はメキシコ人でエル・メンチョが父親ではないと説明。容貌の違いなどを鑑定人の診断も含め証明したものも法廷で提出して間違って逮捕されたのだと主張していた。(参照:milenio.com)
それに対して検察は2018年にエル・メンチョの息子だということを顔相などの特徴から既に検証済だと応答した。
エル・メンチトの弁護側は、米国への身柄の送還を早めるために連邦裁判所のセルヒオ・ゴンサレス理事が米国の麻薬取締局(DEA)から賄賂を貰ったとしてこの判決は違法だとして訴えもした。また、米国の法廷では無期懲役の判決が下される可能性が高いとして人権上問題ありとして送還に反対した。というのは、メキシコの法廷では無期懲役を認めていないからだ。(参照:radioformula.com.mx)
エル・メンチトが送還されたことによってエル・メンチョは早急に後継者を決める必要に迫られている。エル・メンチョが腎臓病で人工透析が頻繁に必要になっているというのは米国の麻薬取締局にも情報として伝わっている。その意味からも彼を早急に逮捕する必要にDEAは迫られている。
CJNGの後継者として第一候補とメディアが予測しているのが、ファン・カルロス・バレンシア(エル・03又はJPL)だ。彼はエル・メンチョの実の息子だとも言われている。
次に候補としてエリック・バレンシア・サラサール(エル・85)とルイス・メンドサ(ラ・ガッラ)の二人がいる。なお、この二人は資金的にシナロアのリーダーイスマエル・サンバダ(エル・マヨール)から支援を受けていると推測されている。だから、最終的にはシナロアがCJNGを吸収する可能性もある。
更に、後継者としてウーゴ・ゴンサレス・メンドサ・ガイタン(エル・サポ)がいる。この彼は米国の麻薬取締局(DEA)が最も狂暴な人物だと見ている。
(参照:unionjalisco.mx)