3月12日の紙面の週刊誌広告で、日本政府の新型コロナウイルス感染症対策を批判するタイトルが躍った。
- コロナ恐慌、安倍〔官邸〕錯乱す(週刊文春)
- コロナPCR検査遅らせた戦犯(週刊朝日)
日本の対応はそんなにマズいのか?
そこで、3月1日以降の人口1千万人当たりの感染者数の推移を主要国別に整理し、グラフ化してみた。その結果を図1及び図2に示す。図2は、図1の一部拡大図である。
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図1 主要国の人口1千万人当たりの感染者数の推移(データは読売新聞の記事より引用)
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図2 主要国の人口1千万人当たりの感染者数の推移(図1の一部拡大)
これら2つの図からは以下のようなことが一目瞭然としている。
① 現時点で、主要国中で人口当たりの感染者数が日本(クルーズ船感染者は除外)より少ないのは、台湾とカナダだけである。
② 台湾では感染者数増加がほとんどなく、見事にコントロールできている。多くのメディアが報じている様に称賛に値する。
③ 日本が羨むCDCを擁する米国の人口当たり感染者数は15日に日本を追い抜き、カナダも日本を追い越しそうな気配にある。
④ 欧州では、イタリアの状況は破局的だが、フランス、ドイツなども予断を許さない状況にある。人口が少ないので目立たないが、スイスは、非常事態宣言をしているスペインよりも厳しい状況にある。欧州全体がパンデミック状態にあることが明らかで、日本も欧州との間の渡航制限を考えるべき時がきている。
⑤ 韓国は感染者が大きく拡大してしまったが、必死の対応で増加率はかなり抑え込まれてきている。
⑥ 図1からは、13億人もの人口を抱える中国で、感染者増加がほぼ完全に抑え込まれている様子が際立つ。どこまで信ぴょう性があるのか疑問。
⑦ 現状でみる限り、日本の感染者数増加の抑え込みは、台湾に次いで優秀で、増加率は欧米よりも明らかに小さい。
週刊朝日の広告では、記事のサブタイトルに「専門家会議の『持ちこたえている』は本当か?」とあるが、図2をみれば答えは「概ね本当だ」となろう。
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2020年3月14日、記者会見を行った安倍首相(首相官邸HPから)
安倍首相が14日の記者会見で「現時点で緊急事態を宣言する状況ではない」と述べたが、こうした事実関係を示せば多くの国民が納得しよう。
日本の対応が、何とか「持ちこたえている」背景には、関係者の必死の努力もあろうが、クルーズ船問題を抱え込んだことで国民の間に早くから警戒心が高まったこともプラスに影響しているのではないだろうか。また下船者から新たな感染のクラスターを生まなかったことももっと評価してよいだろう。
一部のメディアは、こうした危機状態にあっても、今なお事実を事実として伝えることを怠り、安倍たたきに血祭を挙げている。これでは、国民の不安感をあおるだけで、実質的に早期問題解決の邪魔をしていることになる。感染拡大阻止に向け奮闘している関係者の努力を称え、士気をさらに鼓舞する報道もしていただきたいものだ。
(以下、3月16日11:30追記)
参考用に、死者数についても同様に整理して図3に示す。
現時点では、台湾、ドイツ、カナダが1千万人当たり1人未満の第一グループを形成しており、日本、米国、オーストラリアが同1~3人の第二グループを形成している。この点でも日本は優秀である。
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図3 主要国の人口1千万人当たりの死者者数の推移