相場が荒れる時、右顧左眄しないためには荒相場の経験が無いと難しいのだが、当局にも現役トレーダーにもあまり経験が蓄積されていないのが大変なことだ。
私が銀行でトレーディングをしていた20年間では日本国債の金利は9.5%下落した。為替は240円から100円割れも経験した。株が動いた範囲は39,815円から8,500円の間だ。それと比べるとこの20年間はすべてのマーケットが平穏だ。特に国債マーケットは日銀の爆買いのせいでシミ程度しか動いていなかった。
そういう経験で荒れ相場に直面すると皆パニックになる。それが怖い。また、平時の経験しかないと、いかにマーケットが怖いかの認識が持てない。
平時に育ったトレーダーは考えもしないだろうが、マーケットは荒れるものとの経験豊富なヘッジファンドのオーナー達の中には、絶えずファー・アウト・オブ・ザ・マネーのオプションを仕込んでいる人たちがいると思う。
平時はゴジラが卵の状態だが生まれた後グイグイ大きくなったように、相場が荒れだすと、何もしなくても、グイグイと売りポジションが大きくなる。ターボが効いてしまうのだ。すなわちデルタがでかくなり売り手が巨大な売りヘッジをしなくてはならなくなる。
ヘッジファンドがさらなる売り仕掛けをしなくも、すでに仕込んだポジションが自動的にグイグイ大きくなるのだ。私がJPモルガンで長年儲け頭だった時、使っていた手法の一つだ。
もし私が、今、現役のトレーダーだとしたら、今、何をしていたか?
株225先物の売り、日経225先物のプットオプションの買い、$/¥でファーアウトオブザマネーのドルコール円プットの買い、債券先物ショート、債券先物でファーアウトオブザマネーのプットオプションの買い、金利スワップのfixの払い、イールドカーブスワップでイールドカーブスワップが立つポジションの構築、fixの払いのスワプッションの購入等だ。
これが市場にどう影響するか当局もなかなか実感できないだろう。これらの金融商品は先物だから日銀が介入する実物の何倍もの威力がある。