IOCの優柔不断が不安増幅
国際オリンピック委員会(IOC)は「東京五輪を予定通りに開催(7月24日から)する」と、声明を発表しました。「大会まで4か月以上ある」といいます。ぎりぎりまで見極めたい主催者側として、こうした言い方で逃げるしかない事情があるにしても、どうするか態度決定を保留していると、延期すらできず、最悪の中止に追い込まれる懸念があります。
感染は約150か国に広がり、複数の参加国、有力選手から「今夏の開催は無理ではないか」との異論が出されています。主要スポーツの開催が来年にどんどんシフトし、遅れれば遅れるほど、五輪といえども割り込む隙間がなくなってしまう。延期を決定するなら、4月早々がいい。
珍しく麻生副総理が「正しい本音」を吐いたと思います。延期論や中止論が高まる状況の中で「呪われたオリンピック」と、発言しました。「1940年の東京五輪は世界大戦、80年のモスクワ五輪は西側のボイコット、そして2020年は新型肺炎コロナ。40年ごとに問題が起きた」と。
麻生氏は「今夏の開催はとても無理」ということで頭が一杯だと解釈します。コロナ禍に加え、株式市場の世界的な暴落の連鎖反応です。かねてから懸念、警告されていた資産バブルの崩壊です。破格の金融財政出動に迫られ、「五輪どころではなくなった」という思いも重なっていると、想像します。
安倍首相が「完全な形で五輪を実現することで、G7(主要国会議)の支持を得た」(17日)との発言は、東京開催への固い決意の表明なのでしょうか。「完全な形が無理なら延期」、「7月までに完全な形(危機終息)を作るのは難しい」、「だから延期は覚悟している」と、解釈できます。
コロナ対策の外出禁止、集団行動の禁止で各種競技の予選ができず、出場枠の43%が未決定だそうです。IOCは協賛金や拠出金を払うテレビ局、スポンサー企業との調整、延期・中止によるIOC財政への影響を懸念して、早期決定に踏み切れないのでしょうか。
日本が危機終息の宣言をできたとしても、米欧、多数の発展途上国は4、5月はまだ苦闘している可能性が強い。早期に少なくとも延期を決定し、事後の対応に移るべきだと思います。
入場券の販売が4月末から始まります。選手村マンション(3850戸)は五輪の終了後に民間に4900万円から2億3000万円で販売され、抽選は2倍から70倍の人気だそうです。1、2年延期になったらどう対処するのか。資産バブルの崩壊でマンション価格も暴落し、解約者がでたらどうするのか。難問が山積しています。
編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2020年3月19日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。