あなたはしゃべって説得できますか?

多くのやり取りがスマホを介したショートテキストになっている、そういう方は多いのではないでしょうか?たまに会う相手は自分の好きな相手だから何を言っても相手は「うん、うん」とうなずいてくれます。しゃべってストレス発散してすっきりした、という方は多いでしょう。

ヒコトピ/写真AC:編集部

ではビジネスシーンではどうでしょうか?会社の電話は鳴りません。ほとんどがメールやウェブサイトの顧客管理画面から入ってきます。実際のやり取りが少なくなったのは企業側が電話のやり取りに対する時間効率を考えて絞り込んでいることもあります。クレーマーが延々と電話で文句を言うこともあるでしょう。北米でも電話の問い合わせをするのに音声ガイドが繰り返し出てきて電話するのをあきらめさせるような仕組みになっています。

つまり我々の住む現代社会ではかつての人と人のやり取りの文化が大きく損なわれてきているのかもしれません。そして文章には書けるけれど実際にはしゃべることができないといったケースが増えてきていることに懸念を感じているのです。新入社員が会社の電話を取れないという話はよくあることです。何をどう話してよいかさっぱりわからないのです。

文章やテキストは自分の好きな表現を好きに書くことができます。書いている間、誰にも邪魔されません。その表現は時として大人の気品を感じることもありますが、過激になることもしばしばです。なぜならブレーキがかからないからです。例えば怒りのメールの場合には内容よりも感情が先に出てしまうこともあるでしょう。それは書き手にとっては気持ちよいものですが、読み手にとっては受け入れ難いのです。

私は面倒なE-Mailをもらった場合、一日放置することもあります。なぜかといえば読んだときは瞬間湯沸かし器のようにカーッとなり、今、これに対する返事を書いたら恐ろしく厳しい内容になることがわかっているからです。その場合は自分を冷静にするために一晩寝てから気持ちを静めて感情を落としながら返事をするように心がけています。

もう一つは時としてE-Mailに対してE-Mailで返さず、電話や直接会って話をするという手も使います。先日も月ぎめ駐車場の顧客から駐車場内で知らない人に暴言を吐かれた、この駐車場はどうなっているのだ、という厳しいクレームを頂きました。その客と知らない暴言を吐いた人と私どもの関係を考えるとこの方のE-mailには論理的にやや無理があるのです。ではなぜこの客はこんなメールを送ってきたのかといえば誰かにこの怒りをぶつけ、それに対する返事をもらうことでスッキリするからです。

私がとった対応は間髪を入れずその客に会いに行ったのです。たまたま、同じ事務所ビルの別の階の方でしたのですぐに会えました。するとその方は堰を切ったようにしゃべります。私はずっと聞いています。そして言い終わったところで「とてもレアなケースだと思いますが、もしも次回そういうことがあったら私に連絡ください」と名刺を渡しました。これで向こうは収まってニコッと笑ったのです。

こうまる/写真AC:編集部引用

私はメールやテキストと電話、実際の会談を目的に応じて使い分けています。実は電話が一番得意なのです。口がうまいというわけではないのですが、説得しやすい環境を作りやすいのです。それは相手が正面からぶつかってきた際に全然違うところを攻めるのです。つまり「かわして相手が予期していないところを押さえる」のです。そして話の主導権を取ってしまうことで大方うまくいきます。

私は事業を通じて日々トラブルや難題、クレームなどが積みあがっていきます。それを処理するのがマネージメントの仕事でありますのでいかに早く、思惑通りに進めるか、といえばメールなんかでやり取りしている時間はないというのが正直なところなのです。だから「すみません、電話してもよろしいでしょうか?」とテキストしてしまうのです。

私はスマホは生活の中では重宝していますが、依存は一切しません。スマホを一日何時間もいじっているという生活に馴染めないのです。年齢がそうさせる訳ではなく、意識的にそうすることによりしゃべる環境に持ち込むことを心掛けているのであります。人間には言語を通じて会話するという立派な能力があるのですから使わないと損ではないでしょうか?

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2020年3月22日の記事より転載させていただきました。