忘れ去られるオウム真理教 --- 前田 貴大

寄稿

事件当時のNHKニュースより

オウム真理教を知らないと言われる世代の私からでも、忘れられない地下鉄サリン事件から、丸25年たった。25年も経つと、あの事件を知らない人も多くなる。一般的に、筆者の世代(25~35歳)の世代は、オウム真理教を知らないと呼ばれている。事件が起きた当時や裁判の時、そして幹部の死刑執行の際には、こぞって報道していたマスコミも、今年は、サリンの後遺症で苦しんでいた、浅川幸子さんが亡くなったニュースのみ、テレビでも大きく報道されたくらいだ。

地下鉄サリン事件被害者の浅川幸子さん死去 後遺症で(朝日新聞デジタル)

私は、少なくともその当時、この国が騒然とした時を知るものとして、オウム真理教の危なさや、知るか限りの真実を、その当時、生まれていない人や、この事件を知らないものに伝えていく、使命があると感じている。

公安調査庁の調べによると、オウム真理教の後継団体である「Aleph」、派生団体の「山田らの集団」、上祐派と呼ばれる「ひかりの輪」を合わせて、1,650人。拠点施設は国内で15都道府県下35ヶ所に点在し、資産は2018年10月末の時点で11億6,500万円を有している。さらに、勧誘方法はヨーガ教室などの体で勧誘を行い、オウム真理教への抵抗感を無くした後に、麻原の教えを扶植している。また、小さな子供も教団施設に出入りしており、尊師カルタなどの子供用教材を用いて、洗脳を行っている。

そして、これだけでなく、教祖である麻原の誕生月であり地下鉄サリン事件を起こした3月と、死刑執行月である7月には、麻原の遺骨が保管されている東京拘置所の近くで祈祷を行ったりする、聖地巡礼が行われ、公安調査庁も警戒を強めている。

主に「Aleph」は今もなお地域住民の目の前で、日本の平成史史上最悪の犯罪者である麻原への絶対的帰依を見せている。反対に「ひかりの輪」は社会との融和を目指し活動をし、代表の上祐氏が時々、メディアの前や文化人との対談で、当時のオウム真理教を批判し過去との統括文をホームページ上で載せ反省しているように見せてはいるが、上祐氏の行動が結果的に、新しい信者獲得に繋がっているとの指摘もある。ここから見ても上祐氏の行動は「変わっていない」のだ。

基本的にオウム真理教が信者を獲得した背景には、1970年代のオカルトブームから来る終末論や当時のバブル景気に、付いていけず救いを求め信者を獲得していった経緯がある。現代を少し見てみると、都市伝説ブームから来る終末論など少しではあるが、その土台を構築しつつあると筆者は感じている。

国内に次のオウム真理教を発生させないためにも、また後継団体の「Aleph」、「山田らの集団」、「ひかりの輪」の3団体にこれ以上、若者の信者が入信しないためにも、私たちは時々、オウム真理教のことを思い出し、マスコミはその報道力を駆使して、現在の活度や前身団体であるオウム真理教の危険性を、後世に伝え彼らの力を徐々に弱めていくことが重要だ。

麻原を除く、最高幹部と呼ばれた人も平成終盤の2018年に同時に執行されてしまった。麻原の近くにいた当事者はもうこの世にはおらず、彼ら口から事実を語らせることはもう出来ない。それならばその当時を知る私たちが語り、後世に伝えていかなければならない。

前田  貴大(まえだ  たかひろ)
自動車販売会社勤務の会社員、あたらしい党党友