石破 茂です。
我が国において、新型コロナウイルスの感染が現在の程度にとどまっているのは、各位の個人的努力とともに、国民皆保険により、経済的な事情の如何に関わらず国民みんなが医療にアクセス出来ることによるものに違いありません。先人が大変な努力の末に作り上げてくださった国民皆保険制度の有り難さと、医療現場の皆様の献身的なご努力に改めて感謝の他はありません。
知識が十分でないままに軽々なことは申し上げられませんが、ウイルスは確実に「進化」を遂げているとの説もあるようです。
1918(大正7)年春、カンザス州の米陸軍兵舎で発生したスペイン風邪は、日本では同年5月に台湾巡業から帰った力士と、第一次世界大戦に従軍してインド・太平洋方面で活動して帰国し横須賀に停泊中だった巡洋艦「矢矧」乗組員から発生しました。世界中で猛威を振るい、世界で5億人が感染し5000万人が死亡、日本でも当時の人口5600万人の0.8%に当たる45万人が死亡したと記録されています(現在の人口に当てはめれば120万人が死亡)。流行は1918年の第一波、1919年の第二波に分かれ、1920年に自然に終息したのですが、これは集団免疫が獲得されたためと言われています(以上、古谷経衡「日本はパンデミックをいかに乗り越えたか」より)。
ウイルスの存在すら確認出来なかった当時に比して、医学や衛生の水準は格段に進歩しており、100年前と同じような凄惨な事態は起こらないものと思われますが、第一波と第二波ではウイルスが変異していた可能性が指摘されていることには注意が必要でしょう。
昨日東京都が発表した移動制限的な要請を含む措置には様々な反応がありますが、少し気の緩んだ感のあった三連休前と比べて事態は相当に深刻なものになっていると思われます。
ライブ・イベント関係や集会などの再開に向けたガイドラインの策定には、より慎重な配慮が必要となりますが、困窮した事業者や国民に対するつなぎ資金、食費や家賃などの生活資金の支援は迅速に行わなくてはなりません。当面の対策は、困窮の程度に配慮しつつ、即効性と迅速性をより重視すべきです。移動を伴う消費喚起策は二律背反的となりかねず、減税も即効性には乏しいため、順位的には劣後してもやむを得ないものと考えます。
それぞれの政策分野において対策が立案されていますが、安全保障分野において自衛隊にあまりに過大な負荷をかけないように留意することも必要です。衛生部隊を中心に、ダイヤモンド・プリンセス号の乗客・乗員に対する対応や自衛隊病院における検査や受け入れなど、自己完結型の自衛隊ならではの最大限の活動を展開してきましたし、これは今後も続けていくべきものです。
しかし、自衛隊について最も重視すべきはあくまで有事に備えた機能・能力の保全(最後の拠り所たる自衛隊が大きなダメージを受ければ、国と国民生活そのものが危機に瀕するという意味において)です。性格上、十分な距離を取りえない部隊、閉鎖空間とならざるを得ない部隊もあり、新型コロナウイルス対策に忙殺されている間にも、北朝鮮の弾道ミサイル発射や中国による尖閣海域領海侵犯事案の継続など、我が国周辺の安全保障環境が依然として厳しいことに変わりはありません。
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東京オリンピック・パラリンピックの一年延期については、新型コロナウイルスの推移如何によるのであって現時点では評価の仕様がありませんが、これを政局と絡めたりすることには大きな違和感を覚えています。スポーツと政治とはある面で密接不可分であることは十分に承知の上で、常にそのような発想をする向きに対しては嫌悪感に近いものすら感じています。「アスリートファースト」とは一体何か、もう一度よく考えてみるべきです。
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今週記すつもりであった「大江バレーステイ」については回を改めますが、同施設のホームページにアクセスしてみていただければと存じます。
今週末も出席する予定であった全国各地での会合は中止・延期となりました。原則として移動も制限されており、鳥取県内で自民党県連会長としての党用務に限って参加します(自民党三朝町支部総会 3月28日午後4時半等)。
空いてしまった時間を使って本を読もうと努めているのですが、なかなか思うようには捗りません。ダンテの「神曲」と並んでイタリア文学の最高峰との評価が高い、ペストの蔓延で荒廃した17世紀のミラノを舞台とするマンゾーニの「婚約者」(河出書房新社版)を今日との比較において読んでみたいと思っているのですが、あまりに大部なので無理かな…。
皆様どうか十分にご注意のうえ、ご健勝にてお過ごしくださいませ。
編集部より:この記事は、衆議院議員の石破茂氏(鳥取1区、自由民主党)のオフィシャルブログ 2020年3月27日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は『石破茂オフィシャルブログ』をご覧ください。