新型コロナ禍の中、ゴミ拾いする高校生たちの思考も凄かった話

高橋 富人

市民からゴミに関する相談を受けた帰り道、考えることがあり散歩がてら印旛沼のほとりでポイ捨てゴミや産業廃棄物の状況を視察していました。しかし、この日は湖畔がとてもきれいです。

見知った道をぶらぶら歩いていると、複数のゴミ袋が川岸に置いてあるのを発見しました。内容を見ると、岸の草むらにポイ捨てされていそうなゴミであったので、誰かが拾ったものをまとめているのだろうとあたりを見回しましたが誰もいません。

そうこうしているうちに湖畔の広場に到着すると、なんと高校生と思しき12人の集団が、先ほど見かけたようなゴミ袋を手にゴミ拾いをしていました。

今回は、偶然遭遇した彼らに取材した内容を紹介します。

「なぜ今、彼らは印旛沼のほとりでゴミ拾いをしているのか?」ぜひお読みください。

アクションを起こしてみる

このゴミ拾いを計画したのは、緒方諒さんと、田中まなみさんのお二人。

ともに、佐倉高校の1年生です。

なんとこの2人、あのグレタ・トゥンベリさんの活動に賛同した人たちにより創設された国際的な草の根運動「Fridays For Future千葉(以下、「FFF千葉」とします)」の立ち上げメンバーとのこと。

このお2人は、「気候変動を食い止めたり、環境の改善をしたりする活動をしたくて」、FFF千葉を立ち上げたそうです。

私も勉強してわかったのですが、当該組織は世界的にみると、自国の政策が「気候変動を食い止める努力をしていない」と判断された場合、授業時間中に校庭で座り込みをする、などのいわゆるストライキ型抗議活動を行う場合が多いようです。

しかし、「そういった『強い抗議の形をとる活動』は、日本人には不向きなのではないか」と、緒方さんは語ります。

そこで、日本で受け入れられやすい方法で、気候変動や環境に対してアクションを起こすということ、について二人で検討した結果、「まずは、印旛沼周辺のゴミ拾いをしてみよう!」ということになったそうです。

私は、彼らの「まずやってみる」という姿勢に共感しました。課題意識があって、それを解決する方法を考えた時、考え続けても結果は出ません。まずやってみて、ダメなら修正してまたやってみる。

この偶然の出会いがあった3月26日は、新型コロナウイルス対策で学校が閉鎖されている時期です。そんなわけで、会議室等を借りて勉強会を、ということも当然できません。「空気の流れのない密室での複数人の勉強会」は、どんな内容であれ現時点では推奨されるものではないからです。

SNSで同士を募集する行動力

このアクションの参加呼びかけは、なんとSNSだったそうです。具体的には、Instagram。今の高校生は、Instagram一本で10名以上の「やってみよう仲間」を集めることができるのです。これは、私としては新鮮な驚きでした。

今回の活動は2回目ということで、初回は4時間で60袋のゴミを集めたとのこと。

逆にいれば、彼らがゴミ拾いした範囲だけでも、60袋分のゴミを誰かが捨てた、ということです。ゴミの内訳は、「やはりポイ捨てゴミがメインですね」とのこと。何の気なしに、当たり前のように不要になった物品をぽいっと捨ててしまう人たち、とても残念です。

その他、冷蔵庫、テレビ、扇風機、家具、ストーブ、タイヤなどもあったとのこと。大人ですよね、こういうゴミは間違いなく。大人が捨てているのです。

このような状況を、この活動に参加した彼らがどう感じたのか、考えないわけにはいきませんでした。

学校を変えてみたい!

このような活動を通じて、どんな目標があるか聞いてみたところ、田中さんは少し考えた後「学校を、変えたいと思っているんです」と語りました。

今の高校生でも、クラスでの会話に「政治の話」や「環境の話」は、話題として持ち込みづらいそうです。この状況は、私が高校生であった30年以上前とあまり変わらないのかもしれません。日本では、どういうわけかそういう話題は若者のうちは忌避される傾向があります。

これは、安保闘争の記憶が日本社会を相当程度規定してしまっていることにあるのかもしれません。もし、明治維新の流れをそのままに、「若者の社会的プレゼンス」につなげることに成功していれば、日本はまったく違った姿になっていたのではないでしょうか。

田中さんは、「昨日のテレビ番組の話をするように、政治や環境の話ができる学校になったらいいなと思っています」と、にっこり笑って言いました。

政治や環境の話が、若者たちの口に自然にのぼりはじめたら、結果的には日本の政治に対する信頼度はずっと高まる方向に向かうはずです。私は、グレタさんの活動すべてに同意するものではないですが、その発信力が世界の流れを作り始めていることは事実としてあります。

また、その方向性は大きな意味でいえば「正しいベクトル」に向いていると考える立場です。その彼女のいるスウェーデンでは、選挙の投票率は常に90%に近く、政治家への信頼度も高い。それら民主主義の基本を支える方策の一つに、若者の政治参加の土台となっている「ユースカウンシル」がある。

いずれにしても、自然体で柔らかく政治や環境について語ることができる高校生を増やす第一歩を、彼らは踏み出したようです。彼らの活動が、どのように進化していくかとても楽しみです。

そんな彼らと、私たち議員が「自然体で柔らかく」佐倉市政を語ることができたら素晴らしいことです。そのためには、まず私たち市議会議員全員が、市政に関する考えを自分の言葉で、率先して市民の皆さまに伝えていかなければならない、ということを改めて考えさせられました。

明るくて、楽しい笑顔で、環境について語る佐倉高校生たちに拍手を送りつつ、本稿を終えたいと思います。