小口幸人弁護士や内山宙弁護士の問題意識をもとに調べてみましたが、現時点では限りなく「不可」だと思います。
①新型インフルエンザ特措法では交通遮断はできません。
緊急事態宣言が出されたとしても、メニューにない交通遮断はできません。なお、外出「自粛」についても「要請」を超える強制力は持たないので、個々人の外出禁止の結果としての都市封鎖もできません。
②感染症法では地域限定/72時間限定の交通遮断のみできます。
そもそも感染症法では、緊急事態宣言の有無にかかわらず、地域を限定した72時間限り(延長不可)の交通遮断が可能です。
新型コロナについても、3月27日の政令改正で感染症法33条の適用が可能になったので、この地域限定72時間の交通遮断はできます。
しかし、この72時間は延長が許されません(同じ法律にある「入院措置」については最初の「72時間」の後「10日間」ごとの延長が許される規定があることとの対比で、延長規定がない交通遮断については延長ができません)。
また、33条の交通遮断はそもそもエボラやペストが該当する「1類感染症」に認められ、SARSやMERSが該当する「2類感染症」には認められない超強力措置です(どちらにも認められる措置例として就業制限や入院措置や消毒措置があります)。だから、就業制限や入院措置や消毒措置と違い、「感染症の発生を予防」するためにはできず、発生した「感染症のまん延を防止」するためにのみ発動できることになっています。
なぜ72時間かというと、この措置は「交通を遮断している間に、集中的な消毒や健康診断を実施し、感染症のまん延を防止するもの」であり、「消毒や健康診断に要する期間を考慮」して72時間以内とされたのです(詳説感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律/厚生労働省健康局結核感染症課監修)。
したがって、広い範囲の都市交通を遮断して、72時間の間におよそ都市圏の消毒を完遂したり、住民のPCR検査を完遂するなどということは考えられず、ひるがえって感染症法では「首都」あるいは「都市」という広い地域の交通を遮断をすることは予定されていない。予定されていない権利制限を法的に認めることはできない、と考えるべきだと思います。
③しかも感染症法の33条(交通遮断)を新型コロナに適用可能にする政令改正手続きがとっても杜撰!
厚労大臣がこうした政令改正をする場合には、感染症法7条3項で厚生科学審議会の意見聴取が義務付けられています。
でも、新型コロナに二類感染症相当の措置を可能にする政令改正(1月28日の就業制限や入院措置や消毒措置を可能にする改正)のときも、一類感染症相当の措置を可能にする政令改正(3月27日の交通遮断を72時間可能にするなどの政令改正)のときも、厚生科学審議会が開かれていません。
いずれも持ち回り協議で、反対や保留意見はでたのか、それはいかなる意見だったのか、それとも意見ひとつ出さずに黙って賛成に〇をつける委員ばかりだったのか、分かりません。
これは典型的なセレモニーによる形式主義で、法が実質的に求める「意見聴取」とは到底いえないのではないでしょうか。
あわせて、どれだけ緊急性があるにせよ、パンデミック予防・拡散防止というまさに緊急的タスクを帯びた審議会であれば、「持ち回り」審議ではなくて、緊急性に対応できるプラットフォームを整えておくべきではないかと思います。国民に求めている「リモートワーク」できちんと議論して議事録をオンラインで公開し、権利を制限される国民の理解を得て、検証可能性を担保せよと求めたいです。
あわせて、1月時点の予算委では「二種ということで指定している」と答弁していた厚労大臣は、一種相当と認識を変化させた理由を虚心坦懐に説明し、それに伴う重たい権利制限についても国民の理解を求めるべきです。
山尾 志桜里 衆議院議員(無所属、愛知7区)
東大法学部卒業後、司法試験合格。司法研修所入所を経て東京地検などで検察官。2009年衆院選で初当選(現在3期目)。公式サイト。
編集部より:この記事は、山尾 志桜里氏のFacebook投稿 2020年3月30日の記事を転載させていただきました。快諾いただいた山尾氏に感謝いたします。