結核予防の生ワクチン「BCG接種」の新型コロナ肺炎への効用について、池田信夫氏からたびたび詳細報告がなされており、同氏紹介の「ジョンズ・ホプキンス大学のBCG世界地図」は、素人の我々にも説得力がある。
これら科学・疫学的なものから、かなり離れるものだが、「アングロサクソン女性が嫌悪する二の腕BCG接種跡」という、はなはだ俗になる個人的報告をしたい。それも日本に縁のある、ふた昔前のアメリカ女優たちの話から始める。
アメリカ社会では歴史的にもBCG接種がなかったことは、この米ジョンズ・ホプキンス大のデータからも明らかだ。それは米欧とりわけアングロサクソンの女性は、BCG接種跡が正装となるノースリーブ姿を損なうことを嫌う風土だからという。
でも映画「風と共に去りぬ」のメラニー役のオリビア・デハビランドと、ヒッチコック映画のジョーン・フォンテーンという、いずれもアカデミー賞主演女優賞に輝くスター姉妹は、「東京生まれなので、BCG接種の跡がある」という都市伝説で有名だ。だが彼女らと生きた時代が違う筆者らには、それは確認出来ることではない。
他方、このBCG跡を実際に確認できた映画女優もいる。それは1950年代末の「激しい季節」での主演女優、エレオノラ・ロッシドラゴだ。このイタリア美人女優は大胆なベッドシーンで有名だったが、映画ではくっきりBCG接種跡があった。それもヌードでのBCG接種跡アップの映像だった。この「激しい季節」は数年前、NHK衛星放送でも放映されたので、記憶のある人はいるかもしれない。
歴史的にイタリアはBCG接種を強制しなかった国だが、ふた昔前のイタリア・ジェノバ生まれの女優、エレオノラ・ロッシドラゴのBCG接種跡は、少女時代を送った第二次大戦における彼女の母国イタリアのドイツ占領の際か、連合軍進駐での強制的な住民医療措置だったのかもと考える。
あえて言えば、この「激しい季節」でのヌードシーンのBCG接種跡アップ映像とは、第二次大戦時が舞台の映画であり、バレリオ・ズルリーニ名監督が、BCG接種はシンボリックで、特別な意味を持たせたいとしたのかと想像している。戦争・動乱では、伝染病が蔓延する。日本の戦後、米軍からDDT噴射を受けた世代は、理解が早いだろう。
しかし、ふたむかし前の女優話だけでは説得力が薄い。かつて筆者は日本の年長の男女のだれもが知っているエマニエル夫人役のオランダ出身女優、シルビア・クリステルとベルギー・ブリュッセルで会食する機会があった。大胆なヌードシーンで有名なシルビア・クリステルも、このブリュッセル会食では、二の腕上部が隠れるドレスだった。
いま思えば、二の腕上部が隠れるドレスのシルビアの腕には、BCG接種跡があったのか、ともいまは思えるのだが、当時の私と言えば、エマニエル映画でのシルビアのヌードシーンの”別のほうに”いつも気を取られ、彼女の腕には視線が行かなかった。またシルビア・クリステルにBCG接種跡あったとしても、エマニエル映画では画像処理がなされていただろう。ここに紹介した女優はシルビア・クリステルを含め、コロナ騒ぎを知ることなく、歴史の世界に行ってしまった。