新型肺炎と「聖書の世界」を結ぶ数字

中国湖北省武漢市で発生した新型コロナウイルス(covid-19)は7日現在、世界で140万人以上を感染し、8万人を超える死者を出している。文字通り世界的流行(パンデミック)となった。発生源の中国を除くと、欧州と米国が目下、最大の感染地域となっている。

▲イスラエルの民をエジプトから神の約束の地カナンに導いたモーセ像(ミケランジェロの作品、ウィキぺディアから)

新型コロナ危機をフォローしていると、普段の生活ではあまり聞かない「潜伏期間」という専門用語をよく耳にするが、もう一つロックダウン(都市封鎖)に絡んで感染防止措置として「隔離」「検疫」という言葉が登場する。

伝染病では検疫として一定の隔離期間が義務付けられているが、新型コロナの場合、感染の疑いがある人や数日前発行の健康証明書を有していない入国者の場合、2週間の隔離措置を受ける。その「隔離」「検疫」を意味する英語 quarantine がイタリアの「40」を意味するクアランタ(quaranta)をその語源としていることを知って、新鮮な驚きを受けたばかりだ。

当方はこのコラム欄で「『40』は神のラッキーナンバー?」(2019年5月31日参考)を書いた。聖書には「40」という数字が頻繁に登場することもあって、「40」という数字に何らかの深い意味が含まれている、と感じてきたからだ。その「40」という数字を語源とした「隔離」「検疫」という言葉が、新型コロナ危機で頻繁に登場してくるのだ。

「40」という数字が語源の「隔離」「検疫」が伝染病の場合、40日間の検疫期間を意味するようになったのは、欧州でペストが大流行した頃からだという。ペストは本来、ネズミを宿主としてノミを通じて人間に感染する伝染病だ。欧州ではペストで数千万人が死亡した。その感染力と致死率は驚くほどのものだった。

欧州の港に船舶が到着すると、船のゲストは直ぐには上陸できず、40日間、隔離され、ペストが発病していないかどうかの検査を受ける。40日間後、ペストの症状が発病していない乗客だけが上陸を許可された。すなわち、「40」という数字は上陸できるためには必要な「隔離」「検疫」期間となったわけだ。

細菌ペスト菌はネズミを保菌宿主としている。ネズミの血液を吸ったノミが人を咬んだ時、ペストが人に伝染される。ペスト感染症の潜伏期間は通常3日間から最長1週間だが、当時、「40」日間の検疫期間が取られていたわけだ。

欧州人が当時、なぜ「40日」をペストの感染有無をチェックする検疫期間としたかは分からないが、聖書に数字「40」が頻繁に登場することもあって、当時の欧州人は無意識に「40」という数字を伝染病の検疫期間に決めたのかもしれない。

聖書66巻の世界には多くの「40」という数字が見つかる。今月12日はキリスト教最大の祝日「復活祭」(イースター)だが、復活したイエスは40日間かけて、ばらばらになった弟子たちを探し出し、福音を延べ伝えた後、昇天している。ここでも、30日後ではない、40日後だ。

「40」という数字の代表的な例としては、ノアの「40日間の洪水」、モーセの2度の「40日間断食」、カナンの「偵察期間40日間」、イエスの「40日間断食」などが直ぐに思い浮かぶ。神が「40」という数字に拘っていることが推測できるので、「『40』は神にとってラッキーナンバーではないか」という見出しのコラムを書いたわけだ。

聖書に登場する数字「40」の共通点を探すとすれば、古い状況から脱し、新しく再スタートする時に数字「40」が登場してくることが分かる。神はノアに(アララト)山頂で方舟を建設するように命じる。40日間、天が割れ、大洪水が襲ってくるからだという。洪水は25日間でも、30日間でもない。40日間続いた。モーセも40日間の断食後、イスラエルの民を再結束し、カナンへ向かう。復活後のイエスの時も同様だ。ユダヤ教から別れを告げ、新約の福音を携えて神のみ言葉を延べ伝えるキリスト教が始まる。困難を克服し、新しく出発する時、神は不思議と数字「40」に拘っていることが分かる。

新型コロナの場合、通常2週間を検疫期間としているが、その言葉「隔離」「検疫」はイタリア語の数字「40」をその語源としている。そして「40」という数字には古い世界から脱し、新しいスタートを切るために必要不可欠な期間という意味が込められているとすれば、新型コロナの場合の「隔離」「検疫」措置にも同じ意味合いが含めれていると解釈できるわけだ。

以上、21世紀、中国武漢発の「新型コロナ」が「40」という数字を語源とする「隔離」「検疫」という言葉を通じて「聖書の世界」と奇妙にも関りをもってくるのだ。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2020年4月9日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。