緊急事態宣言で保育園を縮小するなら、アウトリーチを拡大して!

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、政府は7日夕、東京都、神奈川県など7都府県で「緊急事態宣言」を出しました。これを受けて、東京都は「緊急事態措置」を講じることとしており、多くの自治体で今週から保育所や学童クラブの規模が縮小されていく見込みです。

既に、渋谷区では緊急事態宣言が出た場合には保育園等は臨時休園にすること※1、世田谷区では6日から学童クラブを休止すること※2を発表するなどの動きがあります。いずれも、医療従事者の家庭などは例外的に利用継続を可としていますが、多くの子どもたちが今まで以上に家庭での生活を余儀なくされることは必至です。

児童虐待が激増する危険

3月以降、休校措置や外出自粛により、誰もこれまで経験したことのない生活を強いられる中で、徐々にストレスがたまり、経済状態も悪化し、さらに保育所や学童クラブといった共働き世帯にとっての最後の砦がなくなってしまう事態・・・

溜まったストレスが子どもたちに向いてしまい、児童虐待が激増することが非常に懸念されます。

特定NPO法人「全国女性シェルターネット」が3月30日に安倍総理、加藤厚生労働大臣ら宛に提出した「新型コロナウイルス対策状況下におけるDV・児童虐待防止に関する要望書」※3によると、

・夫が在宅ワークになり、子どもも休校となったため、ストレスがたまり、夫が家族に身体的な暴力を振るうようになった。

・学校が休みになり、学童や子ども食堂も休みになり子どもが家にいることで、夫から妻、夫から子どもへ暴力が増え、妻も子どもへの暴力をしてしまう。

といった状況が既に起きています。

虐待第一発見という保育所の役割

実は保育所等が児童虐待の第一発見者になるケースが多いこと、みなさんご存知でしょうか。

我々が運営する保育所でもそうした役割を担うことが、過去ありました。保育所は、子どもたちの大切な居場所であるだけでなく、虐待の発見という大事な役割も担っているのです。

保育所が休園ならアウトリーチは必ず実施すべき!

保育所等を休止するのであれば、家庭に外からアクセスしていく「アウトリーチ」が必須です!

文京区や宮崎県、長崎県、京都市、新潟市等では、子どものいる生活困窮世帯に対し、企業などから提供を受けた食品などを配送するとともに、リスクを見つけた場合には、必要な支援につなげていく「こども宅食」を行っています。

アウトリーチの手段は、江戸川区のようにお弁当の配達だったり、明石市のようにおむつの配達だったり、色々あります。

その目的は、配達員や支援員が、利用者と定期的に簡単な言葉を交わしたりする中で、何らかのリスクを見つけた場合に支援につなげ、DVや児童虐待等、様々なトラブルが起きてしまう前に手を差し伸べることです。

現在、家庭内で児童虐待があっても、自粛のため相談センターにも行けず、家にずっと夫や子どもがいるため電話相談もできないといった悩みもあるようです※3。

悲しい事件が起きてしまう前に誰かが気づけるようにしないと本当に危ない。

政策担当者の方々、保育所や学童クラブの休止を決定するのであれば、それとセットで子ども達へのアウトリーチの支援を実施してください!

新型コロナの感染が拡大しているので、もちろん感染対策を万全にした上で実施しつつ。

新型コロナによる自粛の影響で、決して尊い子どもの命が失われることがないように、、、どうかお願いします。

※1 渋谷区「【在園児保護者の皆さまへ】登園の自粛の延長と緊急事態宣言が出された場合の臨時休園について
※2 世田谷区「新BOPにおける新型コロナウィルス感染症に関する対応について【4月4日17時更新】
※3 特定NPO法人 全国女性シェルターネット「新型コロナウイルス対策状況下におけるDV・児童虐待防止に関する要望書


編集部より:この記事は、認定NPO法人フローレンス代表理事、駒崎弘樹氏のブログ 2020年4月9日の投稿を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は駒崎弘樹BLOGをご覧ください。