「在宅勤務の場合は保育園で預かりません」の自治体通知はおかしい

7日夕に政府が出した「緊急事態宣言」を受け、杉並区や渋谷区など複数の自治体が保育施設の臨時休園に関する通知を発出しました。いずれの自治体も、警察官、消防官、医療従事者など社会の機能を維持するためなどの理由で勤務を余儀なくされ、家庭での保育が特に困難な場合には特別保育を実施することとしています。

新型コロナウイルス感染症対策本部が出した「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」※1の別添において、「三つの密」を避けるための取組を講じつつ、

「社会の安定の維持の観点から、緊急事態措置の期間中にも、企業の活動を維持するために不可欠なサービスを提供する関係事業者の最低限の事業継続を要請する。」

こととされており、そのサービスの中に警察・消防などの行政サービスと並んで、「育児サービス(託児所等)」が入っています。

育児サービスに携わる在宅勤務者が保育を断られた

弊会フローレンスは、この「育児サービス」を提供する事業者であり、職員は、警察官・消防官などと同様に特別保育を利用できるはずなのに、一部自治体から発出された保育施設の臨時休園に関する通知※2に、

「在宅勤務の方は、ご家庭での保育をお願いします。」

と書かれていることを根拠に、在宅勤務をしている職員が保育園での預かりを断られ、家で子どもをみながら仕事をしなければならなくなりました。

これ、ちょっとおかしくないかな、と思っちゃったんですよね。

出勤すれば保育園が預かってくれるということなので、「出勤しよう」というインセンティブが働くことになり、政府が示す「人との接触を8割削減」という数値目標に逆行してしまいます。

育児サービスの事業者は、政府や自治体が示す方針によって日々変わっていく状況に対応しつつ、必要な人にサービスを提供するために、保育園などの現場の職員だけでなく、運営側の事務職員も業務に追われているのです。

子どもがいる中で在宅勤務を経験した人ならよくわかっていただけると思いますが、本当に仕事にならないですよ。パソコンで作業をしていると、横で騒ぐし、「ねぇ!次は何したらいいの?」「これ見て!!」とひっきりなしに声をかけてきますよ。

「在宅勤務の人は家庭で保育して」という通知を出せるのは、自治体職員が在宅勤務をあまり経験したことがないからだと思います。我々とお付き合いのある自治体の職員も、「うちは在宅勤務できません。個人情報を取り扱いますからね。え、職員が感染したらですか?そしたら部署全部2週間ストップですね。仕事持ち帰れませんから。」とおっしゃっていました。

在宅勤務ができるように通知を見直してください!

自治体保育担当課、区議のみなさん、「緊急事態宣言時に事業の継続が求められる事業者」※1の職員が在宅勤務を行えるように、以下のような工夫をして、通知を見直してください!

・保育園では密度を減らすために、「緊急事態宣言時に事業の継続が求められる事業者」以外のご家庭は登園自粛に協力いただく。

・登園する子どもも、週5の預かりではなく、週3などにする。また、日によって預かる時間帯を分け、ソーシャルディスタンスに配慮する。

・子どもにうがい、手洗いを積極的にさせ、マスクも常時つけさせるようにする。

接触率8割削減を実現するために、積極的に在宅勤務をしてもらうべきです。そのためには、部分的にしろ在宅勤務実践者の保育園での預かりは行うべきです。そうしないと、結局、出社しないと・・・となって逆効果になってしまいます。

ご検討お願いします!

※1 新型コロナウイルス感染症対策本部「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」 (令和2年3月28 日(令和2年4月7日改正))p.25
※2 杉並区子ども家庭部保育課長「新型コロナウイルスの感染拡大防止のための緊急事態宣言発令に伴う保育施設の臨時休園について」(令和2年4月日)


編集部より:この記事は、認定NPO法人フローレンス代表理事、駒崎弘樹氏のブログ 2020年4月10日の投稿を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は駒崎弘樹BLOGをご覧ください。