私が大学生の頃、どうしても行きたかったのがプレイボーイクラブでした。縁あってニューヨークの同クラブに入ることができ、そこを通じてメンバーシップも取得しました。このメンバー制度は世界共通でしたのでそのカードで六本木の今はなきロアビルにあった同クラブにもアクセスできました。大学生の分際で、とは思いましたが会員制のクラブに入れる優越感は格別なものでありました。
日本には会員制の飲み屋が存在します。要はフリの客は入れてもらえないのです。なにがよいのかといえば「俺、ここのメンバーなんだ。飲みに行かないか」と言われれば相手の方はのぞき見趣味もあり、「ぜひぜひ」ということになります。では会員制の店が果たして会員同士で仲良しなのか、といえばそれはないでしょう。あくまでもマーケティングの手段であります。
いわゆる会員制の本家本元の一つにゴルフクラブがあります。もともとのゴルフクラブの発想は英国のSociety (ソサイエティ)から来ています。つまり共有できる目的をもつ一定水準の人が気兼ねなく友達になれる、言い換えればそこのメンバーはしっかり身元確認できているので安心安全があるということです。よって欧米ではゴルフやそのあとのカードゲームを通じて会員同士の交流を図るのが本筋ですが、日本の場合、「私、〇〇ゴルフ場の会員なので今度ご一緒にいかがですか?」という接待の口説き手段となっています。
アメリカで発達した社会奉仕組織であるライオンズクラブ、ロータリークラブやキワニスクラブなどは堅い団体です。加入し、その組織のルールを忠実に守ることが一種のエチケットであり、それができなければ強制退会させられます。またもっと古くはフリーメイソンもそうでしょう。友愛結社という日本語名がその体を表しています。
アメリカの大学ではフラタニティ(男女とも)とかソロリティ(女子のみ)といった形で組織が形成されます。その多くは一定の条件を満たしていることが要件であり、例えば同じ寮生活をしたといった強い近親関係が背景にある場合もあります。
日本の大学のクラブでは新入生歓迎コンパで飲み過ぎて急性アルコール中毒になるという問題がかつてはしばしば発生しましたが、あれも一種の強い近親感を作り出す演出の一つだと考えています。
会員というのは緩い会員ときつい縛りの会員の両方があります。ビジネスの観点からすれば冒頭のプレイボーイクラブのようにいわゆる「会員証」をばら撒き、マーケティング上の「閉じてるから入りたい」という心理的間隙を突いたものだと思っています。皆さんのお財布の中にも〇〇の会員証が1-2枚ぐらい入っているのではないでしょうか?
一方、日本の芸能系のファンクラブは芸能人や人気グループがテレビ越しには誰でも観られてもコンサートで生をご披露するのはファングラブのメンバーが主体というマーケティングを施しています。ファンクラブに入らないとコンサートのチケット入手は困難というハードルを設けることにより会員制ビジネスが強固な形になっています。
つまり差別化を図れるかどうかがポイントではないかと思うのです。航空会社のマイルが貯まる会員券はどの航空会社もそのサービスの内容はポイントの差こそあれど大差ないのです。だから私のように同じルートを行き来している者にとって3航空会社の会員券を分け隔てなくその時の状況次第で使わせて頂いています。いつかはポイントがたまるからです。これは差別化が全くできておらず、会員制ビジネスとしては成功しているとは思えないのです。
どれだけ個性と囲い込みができるかが会員制ビジネスの基本ともいえそうです。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2020年4月12日の記事より転載させていただきました。