コロナショックで「日本の人口構造のトレンド」は変わるのか?

日本経済新聞の記事によれば、総務省から2019年10月1日時点の人口推計が昨日発表されました(図表も同紙から)。以前から続いている3つの流れが続いていることが確認できました。

(日本経済新聞から)

(日本経済新聞から)

それは、外国人の流入、超高齢化の進行、そして東京を中心とする都市への人口集中です。

1.外国人の流入
外国人は7年連続で増加し、増加率も上昇しています。外国人人口は243万6千人と過去最多になりました。しかも、その85%の207万人が15~64歳の生産年齢に該当しています。労働力の確保に外国人が欠かせない存在になっていることを示しています。

2.超高齢化の進行
65歳以上の人口は28.4%となりそのうち75歳以上が半分以上を占めているそうです。そしてこの比率は今後さらに高まっていきます。

3.東京への人口集中
表からわかるように、人口が増えている都道府県はわずか7つに過ぎません。その中でも東京の人口増加が圧倒的になっています。ただし東京の人口増加率も頭打ちになってきています。

コロナショックによって、これらの人口構造のトレンドが変わる可能性があるのでしょうか?

まず変わらないと考えるのが、外国人の流入と超高齢化の進行の2つです。

外国人はコロナショックの世界的な広がりで一時的に移動が難しくなるかもしれません。しかし、外国人労働力を必要とする日本の状態は変わりません。コロナウィルスの感染拡大がピークアウトし、経済活動が徐々に平常化すれば、スピードは以前より遅くなるかもしれませんが、外国人の流入は続くはずです。

また、超高齢化は生まれる子供の数が減り、平均寿命が伸びれば必然的に進んでいきます。この長期的なトレンドを変えることは容易ではありません。

問題は、東京への人口集中です。リモートワークの普及によって、在宅勤務が広がれば都心に住む必要はなくなる。またオフィス需要も減っていき、分散化が進むので人口集中とは逆の動きが始まるのではないかという見方です。

確かに子供のいる家庭などでは郊外にマイホームをシフトする動きが出るかもしれません。しかし、住む場所というのはドライに割り切って引っ越せるものではありません。周辺のインフラ環境や、家族や友人との距離などの影響が強いのです。リモートワークになったからといって、縁も所縁もない何も無い田舎に引っ越す人が急激に増えるとは考えにくいのです。

コロナショックによって長期的な人の流れには影響はゼロではありません。しかし、それが金融マーケットの株価のように急激に大規模に起こるとは、私には思えません。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2020年4月15日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

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資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。