力不足で実現できなかった「ネット投票」が今こそ必要

韓国で415日に強行された総選挙。コロナ対策で政権が注目を浴びるなか、野党候補者の闘いは制限され、結果は文大統領の思惑通りになりました。米国の大統領選挙も一騎討ちが始まっていますが、マスコミはコロナの報道一色。TVにはトランプ大統領しか露出せず、バイデン氏は集会も出来ずに苦戦を強いられています。

東日本大震災が発生した2週間後の2011324日。その頃の私は、救援活動の為に被災地と国会の往復を続けていましたが、まさかの第17回統一地方選挙(前哨戦)が強行されてしまった時の驚きをよく覚えています。

現場に入れば分かります。この大地震の爪痕からは、いまも尚、出血が続いています。原発もまだまだ予断を許しません。被災地の住民に限らず、国民の多くが「今は選挙どころではない!」と感じています。
そのような時期に選挙を強行するとどうなるか。

間違いなく投票率が下がってしまいます。そうすると、下心満載の支持基盤(利権やしがらみだらけの団体・組織)を持っている政党や候補者が強くなるに決まっているのです。

国家的な危機のどさくさにまぎれて、選挙を行ってしまおうという考えが、私は今の日本の政治を表していると思います。情けなくて仕方がありません。

 (2011.3.26のブログこの非常事態時に選挙!?」より)

東日本大震災の時と同じように、現在は緊急事態宣言下であるにも関わらず、昨日は目黒区長選挙の投票日でした。

三密を避けながらの活動は新人候補者にとって間違いなくマイナスです。そして、感染リスクがある中で投票所に有権者を行かせることは、緊急事態の理念と矛盾しています(投票率は前回比7%上がったとのこと)

落選した候補者の中には「有事でなければ、もっとやれたのに」と悔しい思いをしている人もいるでしょう。

やはり、感染拡大が止まらない中で、7月の都知事選も(他の感染拡大地域での選挙も)強行するべきではありません。

‪‪5月6日迄の緊急事態宣言が延長されるならば、その時点で小池さんは選挙の延期を申し出るべきです。‬‬

しかし、今のような環境下でも選挙を実現する方法が一つだけあります。

それが当時、国会の各党協議会で私が提案させて頂いた「インターネット投票」です。

ネット投票ができるようになれば、自宅にいながら、選挙期間中の好きな時間に、気になる情報を検索しながら一票を投じる先を考えることが出来るようになります。

投票画面で、政策によって各候補者/政党の絞り込みができるようにするなどの工夫を行えば、政策重視の選挙・投票になっていく可能性も十分あります。

私が2010年の公約とした「選挙期間中のインターネット解禁」は2013年に実現することができました。その法律を作る際に「あらゆる角度から技術上・制度上の問題等を検討しインターネット投票導入に向けた措置を講ずる」という条項も付帯決議に入れることが出来ました(最初は与党から反対されましたが、民主党の協力を得て実現しました)。

その後、折に触れてネット投票の実現に向けた検討を呼びかけてきましたが、反対派が多く、なかなか議論が深まりません。「セキュリティーが心配」「ポピュリズムが進む」「ご老人が使えない」など、様々な「できない理由」が列挙されますが、反対派の本音は「投票率が今の4050%から、7080%になってしまったら、無党派層や浮動票の比率が上がり、自分が落選してしまう」ということでしかありません。

(2016.2.14のアゴラ掲載記事次の目標はネット投票の実現」より)

この混乱の中で、今すぐ公職選挙法の改正をしろと言っているわけではありません。私も議員でいる間に賛同者を増やし、実現させることが出来なかったので、偉そうなことは言えません。

しかし、新型コロナのような感染症の蔓延に加え、自然災害が増加傾向の日本においては、選挙の公平性を保つ上でもネット投票が必要な時代になったと言っても過言ではありません。

是非、活動が止まってしまっているインターネット選挙運動等に関する各党協議会を再起動させて、今年中には公職選挙法の改正に着手してもらいたいと思います。


編集部より:この記事は、タリーズコーヒージャパン創業者、元参議院議員の松田公太氏のオフィシャルブログ 2020年4月20日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は松田公太オフィシャルブログをご覧ください。