今を大切にすればチャンスに変わる

ここバンクーバーは非常事態宣言が出て一カ月を超えてきました。確かに街は鼓動を止めたようにひそやかな状態が続きます。宣言されて初めの1-2週間はそれでも取引先から在宅勤務を通じて仕事のメールも来ていたのですが、この2週間はぱたっと止まっています。仕事が展開しないのだろうと思います。誰も一人で仕事をしているわけではなく、様々な会社や人とリンクしている中で返答が止まってしまっているのだろうと想定しています。

(写真AC:編集部)

(写真AC:編集部)

私が一番恐れているのはいずれ平常時に戻った時、積みあがったバックログ(やり残し仕事)が多すぎてパンクするのだろうという懸念です。私は自社内で完結する事業が多いのですが、そうではない業務や仕掛かり案件(新規でやりかけている事業)については実は電話やメールをしまくって仕事を進めさせ、この時に無理やり押し込んでいます。

例えば許認可申請中の高齢者向け介護施設案件は役所と一番脂っこい交渉を終えて実務ベースでの協議に進むところでした。ところがコロナで当然、役所は止まります。設計士も手を緩めます。そこで私の喝が入ります。設計士には家でCADを使い図面を仕上げさせ、Zoomで進捗具合などを確認します。役所に対しては担当のトップらに「こんな小さな案件が数カ月役所の仕事が止まったことで何カ月も先送り放置されるのは致命的だから今、オンライン会議で内容を詰めさせてくれ」と申し入れ、準備が進んでいます。相手も動きます。だって休みではなく在宅勤務なのですから。

つまり皆さん、基本的には在宅になって手持無沙汰になっています。なので普段とは違ったアプローチをかけることで進められるものもあるのです。どうやっても仕事を止めないという信念が必要なのです。

例えば日本の工事現場は大手ゼネコン主導で止まり始めています。日本の工事が早いのは各種作業が交錯する工程を組めるからなのです。例えば一つの狭い部屋の中に電気屋、左官屋、設備屋、ペンキ屋などがいっぺんに作業をする工程を組むことが一つあるでしょう。(北米なら逆立ちしてもあり得ません。)ならば北米流に作業員が集積しない工程の組み方に変え少しでも足を止めない作業のやり方もできるはずです。

予防対策にうるさい当地ですら工事現場は作業が進んでいます。数日前、ある知り合いの改装業者が作業していたので「どうだい、はかどるかい」と聞いたところ「作業員が半分ぐらいだから時間はかかるが工期内にはどうにか収める」と。つまり「遅々として進まない」ではなく「遅々としてでも進める」ことに意味があるのです。All or Nothingではないと思うのです。

一方、日本との絡み仕事は全く動かない状態です。日本は在宅仕事に向かないと申し上げました。社員が週に2-3回会社に来るような感じになっているところも多いようなのですが、北米と違い社員一人の権限がほとんどないためいつもなら半日でできる作業が一週間たってもできない状態になりつつあります。こちらは深刻な遅延です。

日本のテレビニュースで営業の方が「仕事柄出勤しないと…」と嘆いているインタビューがありました。どのような営業かわかりませんが、私は今、電話とメール営業をかけています。これが案外行けるんです。皆さん、暇なので電話でもゆっくり話ができます。こうやって極力会わずとも話を進め、どうしてもという時究極の接点だけ設けるというスタイルです。

私は弱小の事業者であるゆえ、どうしたら問題が解決できるのか、必死で考えるのです。決してズルをするわけではなく、可能な範囲で最大限の知恵を絞るのです。そして今だからこそできる仕事もあるし、普段やれないことに手を付けることも可能なのです。

アリとキリギリスの話をすれば私はアリでしょう。嵐の中でもずっとステディにそして嵐だから普段見えなかった穴が見つかり、ビジネスチャンスにつながるという逆転の発想も出てくるのです。日本をみていると皆と同じことをせずにこうすればいいのに、というアイディアはふつふつとわいてきます。

自分の分は自分で稼ぐという気持ちを持つことがまずは大切ではないでしょうか?

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2020年4月20日の記事より転載させていただきました。