収入が減少した家庭への「1世帯30万円」の給付が、紆余曲折あって、「一律1人10万円」の給付になりました。
この経緯や政策的な論考を数日前に書いたところです。
その中でも書きましたが、この混乱の一つの要因は支援策が分かりにくいことでした。
それにしても、今回のコロナに伴う支援策は分かりにくいですね。
一世帯当たり30万円の給付金(取りやめ)や、一律10万円給付に注目が集まっていますが、実は他にも色んな支援策があるのです。色んな企業や個人への支援がたくさんあって、それぞれ過去にないほどの拡大をしたりしていますが、結局のところ、どういう人がどのくらい救済されるのかという全体像がよく分かりません。
正直、誰がどう救われるのか、漏れている人がいるのか、僕もよく分かりません。
これも、一世帯当たり30万円の給付金(⇒一律10万円給付)に強い注目が集まってしまった要因になったように思います。色んな対象者を想定して、それぞれがどの制度で救われるのかというマッピングを丁寧にやっていたら、足りない部分も分かって制度検討にも役立ちますし、もう少し生活者も安心したかもしれません。
実は、9年前に僕が実名肩書き付のブログを初めて、政策のことを発信し始めたのは、
「なんで役所は、政策を一般の人に分かりやすく伝えないんだろう。」
と思ったことがきっかけなんです。
その後、極力自分の本業の中でも「伝える」ことに力を入れてきたつもりですが、組織としてはずっと「広報」は端っこの仕事のままでした。
でも、実は昨年夏の若手チームの組織改革の緊急提言(厚労省が人生の墓場と話題になったあれです)とか、一生懸命作れば見やすいものを作る能力はあります。
組織として、「広報」という仕事がずっと端っこ扱いだったので、そこにリソースが投入できていなかっただけで。
最近、厚労省がコロナ関係の生活支援策をまとめた資料を公表しました。
正直、初めて色んな生活支援策がまとまった分かりやすい資料を見ました。
すごくよかったのは、1人の人間が伝える気持ちで色んな部署の支援策を1つの広報資料にしたことです。
これまでの役所は支援策を担当している部署ごとに情報を公表するものだから、どこに情報があるのか分からないし、情報のフォーマットもバラバラでとても分かりにくかったのです。
当たり前のことかもしれませんが、霞が関で当たり前のことが、当たり前に行われることを心から望みます。
給付金の議論をする時も、こうした基礎情報をみんなが理解した上で、意見を言うようになれば、もう少し政策の議論もよいものになっていくと思います。
正直、給付金について発言しているテレビのコメンテーターで雇用調整助成金を知らない人とか、珍しくないんですよね。
これは、テレビ側の問題もあるかもしれませんが、役所がちゃんと分かりやすく伝えれば、きっと専門家でないコメンテーターの人も資料を見て理解して話をされるだろうと期待しています。
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編集部より:この記事は元厚生労働省、千正康裕氏(株式会社千正組代表取締役)のnote 2020年4月22日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。