4月26日付の読売新聞記事より。
セブン―イレブン・ジャパンは消費期限が迫った弁当などの実質値引きを、5月11日から全国約2万1000の全店舗で始める。おにぎりや弁当、サンドイッチなどの対象商品を買うと、税抜き価格の5%分のポイントがもらえる。
具体的には、販売期限の5時間前から該当商品をセブンの電子マネー「ナナコ」で買うと、次回以降使用可能なポイントがもらえる(同記事)、とのことである(丼物はその時間が長くなるという)。
セブンというと、最近は24時間営業、深夜営業を中止したいコンビニ店舗との対立で話題となり、公正取引委員会の事務総長が独占禁止法上の問題点を指摘したことが報道されたが、10年ほど前のセブンの独占禁止法に係る話題といえばこの「値引き問題」だった。
コンビニ店舗のオーナーが消費期限の近い弁当類等の値引きをしようとした際に、本部が禁止しそれを阻止したとされる事案について、公正取引委員会は2009年、優越的地位濫用規制に抵触するとして排除措置命令を出した。これを受けて複数のオーナーが損害賠償訴訟を提起した(原告勝訴と敗訴のケースが混在している)。同時に「もったない」運動に連動してしまったので、本部のイメージダウンとなってしまった。
この値引き販売禁止のカラクリは、「加盟店は商標の使用や経営指導の見返りに、一定の利益を本部にロイヤルティーとして支払うが、商品を廃棄処分した損失は加盟店が全額負担するため、売れ残りが多くなれば、それだけ利益の取り分が減る仕組みとなっている」(日本経済新聞2009年6月24日付記事)ことにあった。
コンビニ戦略の狙いの一つはその画一性にある。
「どのコンビニに行っても24時間やっている」
「どのコンビニに行ってもサービスは同じである」
「どのコンビニに行っても同じ品揃えで同じ値段である」
というのが、消費者に一定の安心感を与え、スーパーやディスカウントショップに比べ多少割高でも、「一番近くにある便利な店」への集客を可能にしてきた。一回で買う金額もそれほど高くないので、割高感を覚えることはほとんどないだろう。
オーナーはできる限り売上げを大きくしたい。コミッションの負担を小さくするためには売り上げ増とコスト減が効果的であるのでいろいろ策を打ちたいが、本部は認めてくれない。そこに対立の源泉がある。本部側は値引きをしないことがむしろ売り上げ増につながるとのロジックを展開したが、公正取引委員会には通用しなかったようだ。
これは楽天が送料無料を強行しようとした際に、店舗側を説得しようとしたものとほぼ同じである。公正取引委員会の緊急停止命令申立てを止められなかった(後に楽天側は予定されたプランを一旦撤回したので、公正取引委員会も上記申立てを取り下げた)のは、「店舗の利益のためにやっている」といいつつも、結局は本部(プラットフォーマー)の都合でそういっているだけだと、当局に信じてもらえなかったということなのだろう。
今回の本部主導の値引きがどのような意味を持つのかは断片的な情報では即断できないが、表示価格を下げるのではなくポイントを付与するという形での実質的な値引き(それも5%であるが)といったあたりは、やはりコンビニとしての「画一性」へのこだわりがあるということなのだろう。ナナコポイントの付与なのでそれはセブン本部側の負担でなされるものだろうから、それ自体店舗と本部との対立を引き起こすものではないだろう(コミッションの取り方もポイントになるかもしれないが、この辺りは詳しい人物に委ねたい)。
また、ナナコカードの利用が前提なのでビジネス上の合理性ありということなのだろう(他社の動向も当然重要な前提となる)。ただ弁当等の売れ行きのよくない店舗は、ポイント5%付与対象のものを多く提供することになり、セブン本部への負担を増やすことになる訳だが(それを抑止する策はあるのだろうか)、そのような統計情報を前に本部はどう店舗にアプローチするのだろうか。そこに新たな火種は生じないか。
あるいはポイント5%付与をする代わりに表示価格の値引きは認めないなどの条件が付くようなことはないのか。何れにしても追加情報を待ちたい。