厚労省が歯科医にもPCR検査を認める大英断

八幡 和郎

厚生労働省は、新型コロナウイルスの感染を調べるPCR検査における検体採取について、4月26日に検体採取を医師だけでなく歯科医も可能にすることを決めたそうだ。岩盤規制で医師しかできない医療行為の範囲を無闇に広くしていた厚生労働省にしては大英断だが、それが可能なら、なぜ、いままで決定ができなかったか糾弾すべきだ。

flickr、写真AC

ただし、26日に開かれた専門家による懇談会で方針が了承されたが、今後、同省は具体的な運用を詰め、自治体に近く通知するのだそうだ。悠長さに呆れる。

PCR検査は、鼻腔などから検体採取をするが、「帰国者・接触者外来」や地域の医師会が運営する「検査センター」で、医師や看護師らが行ってきたが、「検査の需要増が想定されている」ので、口腔分野に知見がある歯科医にも担ってもらうことが急務と判断したのだという。

「検査の需要増」は2か月前から急務だったはずだが、いまになっても「想定されている」というのが彼らの認識らしい。これでは、いくら安倍首相が拡大を指示してもダメなはずだ。「治療に当たる医師の負担減も期待できる」といっているが、そういう言い訳をしているのは、よほど医師の独占領域を崩すことに気を遣っているかの反映だ。

そもそも、2か月前から、イギリスなどでは看護師が2人で患者を訪問して採取しているというニュースが流れており、医師の立ち会いは必要ないことが分かっていた。さらに今度は、ニューヨーク州のクオモ知事が薬局での検査を認めるという方針を出した。

もちろん、どんな薬剤師でもできるはずはないが、何人かのベテラン薬剤師に聞くと、数時間の研修を看護師さんからでもしてもらえば大丈夫だろうという。もちろん、リスクはある仕事なので、できるから希望するかは別だ。そもそも、海外では予防注射などでも薬局でできることが多いと聞く。

日本では医師の独占分野がやたら広い。かつては、耳垢取りまで医師でないとできないことになっていたが、2005年7月26日「医師法第17条、歯科医師法第17条および保健師助産師看護師法第31条の解釈について」という厚生労働省医政局長通知で同通知の医行為ではないとした行為の中に「耳垢を除去すること(耳垢塞栓をのぞく)」が含まれて解禁されたが、自治体のなかには禁止を継続しているところがあるとも言う。

使い捨てのコンタクトレンズをつくるたびに、3ヶ月ごとか何か眼科医の検査を受けねばならず、保険証を忘れると5000円くらいとられるが、1年くらいは大丈夫だろうし、眼鏡店の店員が研修か何か受けて資格でもとれば十分な気がする。あるいは、写真を撮ってまとめて医師がみて不都合なら使用停止を連絡すればいいことだ。コンタクトレンズ屋でアルバイトで検査している眼科医(かどうかも分からないが)の退屈そうな顔を見ると哀れを催す。

救急車の救命士のできる仕事はだいぶ拡大されたが、かつては、「気管挿管」が許されていなかったので夥しい患者が命を落としていた。それが、解禁されたのは小泉時代の2004年のことだ。

検査数を増やすための具体案を論じよ

ともかく、PCR検査数を増やすことについては、拡大しろという人のほとんどすべてが、過去にどうすべきだったというばかりで、いますぐに拡大する具体案を示さない。検体の採取については、上記の通りだが、今度はそれを検査する方もはかどっていない。

韓国やドイツなど大量にやっているところでは、ぜんぜん違う方式で検査しているのだろうか?楽天のキットは品質に問題があるとも言われているが、韓国やドイツのは判定が簡単にできて、かつ、正確なのだろうか?あるいは、精度は悪いがそれは承知でたくさんスピーディーにやってるということなのか?さっぱり分からない。

そう言っていたら、世界中に輸出している韓国産の新型コロナウィルスの検査キットから多くの不良が確認出来たと報告が相次いでいるという報道がされている。

イタリア等多くの国に輸出された韓国産の新型コロナウィルス検査キットにつき、メーカーから供給された検査キットから大量の不良が発見されたというのだ。

検体採取キットは検体を採取して変質したり汚染されないように保存する用途に使用され、検体採取キットの溶液はピンクになるのだが、汚染されると黄色に変色する。ところが、「不良品が70~80%もあり、検査キットの線がピンクではなく黄色になってしまう」という報告が相次いでいるようだ。

韓国の食品医薬品安全処は4月20日、その業者の製品のうち、特定の日に生産されたものに不良が発見され自主回収に入っているとしたが、別の日付の別の生産ラインからも不良品が続出しているらしい。

そして、その企業は米軍部隊などに約12万個の検査キットを出荷し、多くの国に輸出しているらしい。

聯合ニュースによると、韓国疾病管理本部は、22日に新型コロナウイルスに感染して治癒した人のうち、約5割の人の体内にコロナウイルスが残留していることが分かったと発表した。韓国疾病管理本部が25人の患者について分析したら12人(48%)の人の痰から新型コロナウイルスの陽性反応が出たとのことだ。

韓国中央防疫対策本部の鄭銀敬本部長は22日の会見で、「患者の体内に抗体ができてもウイルスを完全になくすせず、ウイルスが体内に残留する時間はさまざまなのではないかと見ている」と述べたそうだが、そもそも、陰性になったという最初の検査自体が怪しいものだ。

むしろ、そのくらいのいい加減なものだと承知の上で、どんどん検査するのでも、やらないよりましと割り切り、陽性と出ても、安直に入院させないというのが正解なのかもしれない。

ドイツでは10人分の検体を混ぜて検査し、陰性なら全員、陰性と判断し、陽性の場合に絞り込みを賭けていくという方法でスピードアップを実現しているらしい。そういう工夫もぜひ採り入れて欲しい。