夫婦ともに新型コロナウイルス感染が明らかになったフリーアナウンサーの赤江珠緒さんが、「親が共倒れになった場合、子供の面倒は誰が見るのかという問題」などについてつづった手記を発表し※1、関心を集めています。
赤江さんは、夫と2歳の長女との3人暮らし。2歳の長女はPCR検査の結果、陰性と判定されました。現在、夫が入院中のため、発熱の症状が出ている赤江さんが自宅で長女の面倒を1人で見ているそうです。
感染拡大中の今、いつ誰が赤江さんと同じ状況になってもおかしくない。決して他人事ではないですよね。
赤江さんの場合は、今のところ軽症で自宅で子どもの面倒をなんとか見られていますが、両親が共に重症で入院してしまった場合、陰性の子供をどうするかという問題は早急に対策を考えておく必要があります。ひとり親の場合は、自分が重症化したら子供はどうすれば良いのかという不安が特に大きいと思います。
現状の選択肢
親が入院してしまった場合、以下のような手段が考えられます。
①自宅で実家の親・親戚・知人に見てもらう
②ベビーシッターに見てもらう
③児童相談所にある一時保護所、乳児院や児童養護施設に預ける
まず①ですが、実家の親や親戚は高齢の場合が多く、感染してしまう可能性があるので、中々難しい。
また②は、全国最大の病児シッター団体の私たちフローレンスでも、シッターが1人で陽性患者と同じ空間に伺う、というのは非常に難しく、一般のベビーシッター会社でもそれは同じ状況だと思います。
③は現在、一部の地域で実践されつつあります。
しかし、先日も病院付属の済生会病院付属乳児院ですら、乳幼児たちがコロナ感染してしまったように、児童福祉施設はこれまで必ずしも感染症対策に慣れているわけではないなので、すぐに感染症対策を行うというのが中々難しいのも確かです。
乳児院の乳幼児8人が感染 東京・済生会中央病院(ANNニュース)
病院が消去法的に最適か
では、今のところ打ち手はないのでしょうか。
あるとしたら、「病院で面倒をみる」という方法が、今のところ残った選択肢だと思います。
なぜなら、陰性とはいえ、濃厚接触者である子どもをケアするためには、高度な感染防止対策が必要なので、病院以外の場所では、なかなか対応が難しいからです。それに、特に都市部では、多くの一時保護所や児童養護施設が満員に近いという問題もあります。
病院にベビーシッターを派遣することで病院負担を軽減
しかし、病院に預けるといっても簡単ではありません。病院もコロナ対応で手一杯で、陰性の子どもの日中ケアまで行うマンパワーの余裕はありません。
杉並区では、児童相談所と保健所を通じて子どもを病院で預かってもらう対応をとっているとの報道もありますが、杉並区の担当者は「これまでのケースでは、たまたま病院が見つかったが、今後、受け入れられない病院が出てくることも予想される」と話しているそうです※2。
そこで、病院で子どものケアができるように、病院にベビーシッターを派遣するのが良いと思います。
病院なら、医師の指示の下、感染防止対策を万全に行って、子どものケアを行えるからです。感染防止のノウハウがあるとは限らないベビーシッターが1人で在宅でケアをするより、有効です。
しかも、親が入院している病院で預かれれば、親子で面会はできなくても、親子の不安はかなり小さくなると思います。
これを可能にするために、国や自治体は、受け入れ病院やベビーシッター会社への助成を行うべきです。
もちろんこれは僕が考えた一案ですので、各地の実践の中で良いアイデアがありましたら、ぜひご教示いただけましたら幸いです。
いずれにせよ両親が感染してしまった場合、このままだと子どもたちが行き場を失わなってしまいます。今のうちからセーフティネットを作っておけるよう、知恵を出したっていけたら、と思います。
※1 TBSラジオ「【追記あり】「たまむすび」リスナーの皆様へ ~赤江珠緒さんからのお手紙(全文)」
※2 NHKニュース首都圏 NEWS WEB
編集部より:この記事は、認定NPO法人フローレンス代表理事、駒崎弘樹氏のブログ 2020年4月26日の投稿を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は駒崎弘樹BLOGをご覧ください。