金正恩氏の重篤説については25日付のブログでも書いたように個人的にはあり得るとみています。様々な情報が錯綜していますが、明らかに現職復帰が不可能と断言しているものもあり、かん口令を敷いているのに情報が洩れているようにも見えます。
トランプ大統領の「状況は把握している」という表現も奇妙です。何もなかったとは思えず、再び姿を見せるかもしれませんが、次のシナリオを考えなくてはいけない段階にあるかもしれません。
金正恩氏はもともと健康状態が悪いとされ糖尿のほかに家系で代々、心臓疾患を抱えていました。今回、一部の報道では1月にフランスの医師団が治療に来たとあります。金家は祖父の金日成の時代からなにかあればフランスの医師団が派遣されてきた流れがあります。
ところが、4月に再び健康状態に異常をきたした際、フランスの医師団がコロナで動けず、急遽中国から医師団50名ほどが4月23日に北朝鮮入りしたというものです。本件はロイター通信が世界に発信してそれを多くの報道機関がフォローしています。
ところが実態はその医師団がくるのが間に合わず、北朝鮮の医師団が手術を試みたが駄目だった(植物人間化した)という報道もあります。この一連のストーリーをどうとるかは個々の判断にお任せしますが、どの情報を見てもおおむねストーリーはブレていません。唯一違うのはいろいろあったけれど元気という説とシリアスという見方です。
では、金正恩氏が第一線に戻れなくなった場合のことを考えてみましょう。
いくつものシナリオは作れます。
- 妹の金与正氏が引き継ぐ これは昨年10月に正恩氏が白頭山に行った際、自分の後継は与正氏と述べたとされます。与正氏の現在の肩書は思想教育をする党宣伝扇動部第1副部長であります。可能性30%
- 金家の総力戦 これには与正氏を中心に美人妻の李雪主氏と叔母で張成沢の夫人だった金敬姫氏も含まれます。また金正恩氏には3人の子どもがいるとされますが、どの子も10歳以下で実質的ではありません。可能性5%
- 与正氏を中心に現存幹部が集団体制を敷く これはあり得ますが、うまくいく気はしないです。可能性30%。
- 軍部によるクーデター あり得ると思います。ただし、その後の統制が取れなくなり、諸外国が即座に介入し、付け入るスキを与えることになります。可能性35%
一番の問題は金家に金正哲氏以外にめぼしい男がいない点であります。そして正哲氏が政治の世界に戻ることはまずないでしょう。そうなれば男尊女卑の同国において与正氏がカリスマ性をもって指導力を発揮できるかであります。金正恩氏ですら苦労した軍部の抑え込みを彼女ができるのか、といえば疑問符はつきます。
では軍部はどんなクーデターを起こすのか、ですが、持てる戦力を使い、示威行為を展開する可能性はあります。過去も政治空白期に混乱を引き起こしています。
ただし、今回は周辺国が黙っていないはずです。周辺国に下心が満載だからで、仮に北朝鮮軍部に不穏な動きがあれば中国とロシアが介入するだろうし、アメリカも黙っていないとみています。
事実半島周辺では中国、ロシア、アメリカあたりが既に動き始めており、何かあった時に即時対応できる準備が進んでいるように見えます。イメージの最終形としてはポツダム会議とGHQのようなものです。ただし、誰がどうするのか、各国間で調整ができているのかが不明瞭であります。
もう一つ、韓国の動きがわかりにくくなっています。理由は文大統領の立場がそうさせているのだろうと思います。選挙が終わり、自身の支持率も上がり、北朝鮮といよいよ融和策を取ろうとしていた中でそのシナリオが崩れています。仮に最悪の事態の場合、日和見主義的政策において手を結ぶ相手を誰にするか絞り込めない問題が生じます。韓国政権が北朝鮮事情を明かさないのはその立場を表明できないからだとみています。
コロナの中でこの動静をどう捉えるか、あるいはどう対策を取るか、今頃、米中ロの大諜報合戦になっている中、韓国諜報部隊は情報を生かせないジレンマに追いやれているようです。残念ながら日本には諜報部隊がいないので二次情報の分析にとどまります。最終的にはアメリカと中国の覇権争い、そして韓国とどう関連付けるか、というシナリオではないかと想像しています。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2020年4月28日の記事より転載させていただきました。