新型コロナウイルスの感染拡大が続く中で、1年後に延期した東京オリンピック・パラリンピックの開催が「本当に大丈夫か?」と言われ始めています。
夏になればウイルスが弱くなるという説もありますが、秋から冬にかけてむしろ繰り返すという説もあります。またオリンピックやパラリンピックは日本だけの問題だけではありません。例えば、アフリカ諸国で感染が収束していなければどうするのかという問題でもあります。収束していない国の選手だけは排除するわけにもいきませんし、日本で収束していても、世界中から観客・観光客が押し寄せればまた感染拡大することもあり得ます。
さて、4月26日(日)に放送された「アッコにおまかせ(TBS系)」という番組の中で長野保健医療大学の北村義浩特任教授が、個人的見解としながら「通常開催の可能性はゼロ」と明言しました。「通常開催って何?」って一瞬思いましたけれども、どうやら安倍総理が言っている「完全な形での開催」と同義語のようです。また教授は「通常開催はだめだけれど、無観客のものだったらひょっとしたらできるかも。また、ワクチンやアビガンのようないい治療薬ができれば、何らかの形で、限定的であるとは思うけど、実行できないものでもない」とも話してしました。いずれにしてもこの発言は、医療分野の人が個人的な見解として、感染が収束してないんじゃないかという発言です。
一方で、お金の面でも心配があります。
翌27日(月)の産経新聞では、「オリンピック5団体でスポンサー離れ」との記事を1面トップで載せました。今後、経済が大きく落ち込むことが確実な中で、1年延期されたオリンピックにスポンサーが契約を継続してくれるのかという問題です。すでに、アメリカ・オリンピック&パラリンピック委員会(USOPC)も、オリンピック完全中止の可能性も考慮に入れて、スタッフの給与を最大20%カットする準備をしようとしているとAP通信が報じました。この報道によれば、これはオリンピックが中止になった場合の損失も織り込んでいるそうです。
そういえば4月20日のIOC(国際オリンピック委員会)公式HPに、「安倍晋三首相が現行の契約に沿って日本が引き続き負担することで同意した」と掲載しました。その後、日本側が抗議して翌日には削除されました。これに対する見方は二つあるでしょう。一つは、1年延期を取り付けるために、日本が内々に提示しているのではないかという見方。もう一つは、これから日本側と分担割合を交渉する前にIOC側が観測気球を上げたのではないかという見方です。私にはどちらかわかりませんが、はっきり言いたいのは、日本側は開催断念をIOCにちらつかせるべきだと思います。
以前にも言いましたけれども、IOCはオリンピックを開催して、それを世界にテレビ中継する放映権料で日常経費をまかなっています。1兆円以上を投資したオリンピックが中止になったら確かに日本側も困ります。けれども、整備した施設は数年後にまたオリンピックを招致すれば使えます。何よりも困るのはIOCです。オリンピックがなくなればスポンサー料も放映権料も全部が飛んでしましますから。
編集部より:この記事は、前横浜市長、元衆議院議員の中田宏氏の公式ブログ 2020年5月1日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。