イージス・アショアは現実無視の安倍“総統府”の思いつき

イージス配備、秋田県内軸に調整 政府、現行案は断念(東京新聞)

政府は地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」について、現行案の陸上自衛隊新屋演習場(秋田市)への配備を断念し、新たな候補地として秋田県内の国有地を軸に選定する調整に入った。

防衛省は日本全域をカバーするためには、東日本で秋田県、西日本で山口県にそれぞれ1基配備する必要があるとの立場。政府筋は「秋田以外の県に配備したら、日本全域を守る構想が崩れる」としている。

アショア導入はグローバルホーク、オスプレイ、追加のF-35などと同じように総統府…じゃねえ官邸から降ってきた話です。有無を言わさず防衛省に押し付けた案件です。

アメリカ様のご機嫌を取り結ぶためにトランプ政権に貢いだ、朝貢外交です。巨額で不要な装備を自衛隊に押し付けて、防衛予算を圧迫してもアメリカの歓心さえ買えればいいというお話です。その中心人物は和泉首相補佐官らしい。彼と内局のヒラメ官僚の合作のようです。このため現場の部隊で悲惨なことになっているわけです。

それを緩和するために、第二次安倍政権では本来想定していなかった支出を手当するための補正予算を目的外の買い物にまわして第二の防衛予算として、本予算の不足を補っています。とても民主国家の文民統制とはいえず、ナチスドイツの独裁に近いシステムとなっています。

ハワイのイージス・アショア・サイトでの発射訓練(防衛省サイトより)

その中でも特にアショアは悪手です。まずレーダーが海自のイージス艦と異なる、ロッキードマーチンの製品です。これだけでも何か「大人の事情」が感じられます。

そして事前に他の案含めての調査も行わず、導入ありきで始まったわけです。これまた総統の思いつきを国防軍や国民に押し付けるナチスドイツにそっくりです。

しかもお値段は「適当に握ってくれ」みたいな話で、いくらになるか不明です。

すでに何度もご案内しておりますが、海自のイージス艦のイージスレーダーは50海里の沖合にでないと使用しないことになっています。

仮に内陸で住宅街の近い、アショアの設置がOKならば海自のイージス艦が陸地から50海里はなれてからレーダーに火を入れる必要はない、ということです。

後の防衛大臣は記者会見のぼくの質問に対して以下のように答えています。

河野防衛大臣記者会見(令和2年3月31日)おけるぼくの質問です。

(出典:防衛大臣記者会見(防衛省サイト)清谷ブログ

Q:アショアについてお伺いします。アショアはアセスメントで導入が可能ということであれば、例えば海自のイージス艦が現在では50海里外に出てからでしかイージスレーダーの火を入れてないのですが、湾内だとか停泊地内でもこれが使えるということになるのでしょうか。

A:運用についてお答えするのは差し控えます。

常識的に考えれば、イージス艦がレーダーを50海里沖合で作動させるのは陸地にちかいと「何らかの問題」が生じるからでしょう。

大臣の発言を換言すれば、地元にまともな情報開示をするつもりはないよ、と言っているわけです。強力なレーダー波による人体や電子機器などの影響に関して地元に説明するつもりはない、ということです。

まあ、旧帝国陸海軍宜しく、「地方人(民間人)に説明するつもりはない。お上に逆らうつもりかこの非国民」と言っているのに等しい。イージス艦が停泊時にもレーダーを使用するようして、何の問題もないとデータとエビデンスを示さないと地元は納得しないでしょう。これは民主国家のやり方ではありません。

辺野古の埋め立てと同じように、はじめに導入ありき、でしょう

アショア導入に際しては巡航ミサイル、ドローン、迫撃砲弾などへの防御用の対空火器も必要でそれを使用すれば、周辺に副次被害が生じます。これら防御システムを導入しないのであればそれはアショア導入ありきで本来必要ない、あるいは戦争ごっこと同じメンタリティで導入したい、ということになります。

アショアよりもイージス艦を増やす方が遥かに合理的です。
海自の旧式艦を除籍し、FFMや警備艦を見直して、無人機を導入すればコスト的にも人員的にも無理はありません。詳しくは以下に書いてあります。

イージス・アショアは必要ない

基本的な情報開示も地元にせずに、官邸のトップダウンで導入をゴリ押しするならばそれは独裁国家の所業です。

Japan In Depthに以下の記事を寄稿しました。

European Security & Defence に以下の記事を寄稿しました。
Hitachi wins Japanese bulldozer contract

東洋経済オンラインに以下の記事を寄稿しました。


編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2020年5月7日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。