アパホテルが目論む「ビジネスホテル1人勝ち戦略」

内藤 忍

国内の宿泊ビジネスが苦境に陥っています。4月24日にはカプセルホテル運営のファーストキャビンが破たん。そしてその3日後には、大阪のWBFホテル&リゾーツも経営破たんしました。

東京・赤坂のアパグループ本社(Wikipedia:編集部)

そんな中、大手ホテルチェーンのアパグループは、5月10日から6月30日まで「新型コロナウイルスに負けるなキャンペーン」を仕掛けてきました。全国のアパホテルで、シングルルームが1泊1室2,500円の特別料金からになります。

コロナウィルスによる営業不振を、価格破壊で乗り切ろうとする戦略のようです。2500円では、維持コスト程度しか賄うことができず、明らかに原価割れの赤字価格です。
それでも営業するのは、稼働率ゼロよりも、安い金額でいいから宿泊客を獲得したいと言う考えかもしれません。

しかし、今回のキャンペーンは、そんな窮余の策と言うより、もっと戦略的な目的があるように見えます。それは、低価格戦略によって、国内の宿泊需要をひとり占めしようとするシェアの拡大です。これによって、体力のない同業他社は、さらなる苦境に陥いることが予想されます。

競合が廃業したり、経営難に陥ったホテルを吸収することで、アパグループの国内宿泊施設でのシェアが高まれば、価格支配力が高まります。アパ直という自社サイトで予約してもらえれば、じゃらん、楽天トラベルといった代理店に手数料を払う必要もなくなるメリットもあります。

アパホテル以外にも体力のあるホテルチェーンが、価格競争に追随すれば、さらに弱小の同業者は飲み込まれていきます。

いずれ、国内のビジネスホテルがアパホテルだらけになる。そんな可能性も出てきました。

「アパかそれ以外か」。それは大げさかもしれませんが、選択肢の減っていくビジネスホテルの業界地図は、あまり想像したくありません。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2020年5月10日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。