9月入学:簡単ではないけれども、今がチャンス!

中田 宏

学校の9月入学議論が本格化するかもしれません。「なぜ、9月?」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、この議論は実は古くて新しい議論なんです。

私、公の立場にあるときに、「9月入学に賛成」と言ったことがあるかは記憶にありませんが、実はずっとそう考えてきました。今回、この議論が出てきたのは、新型コロナウイルスの感染拡大防止の一環で学校が今、休校になっているからです。

思い起こせば、4月7日に緊急事態宣言が発令されるはるか前の2月末に、安倍総理が全国の小中高校などに休校要請をし、実際3月2日から全面的に休校になりました。それ以降、一時再開された期間や地域もありましたけれども、卒業式や入学式も満足に行われず、いずれしても4月に入ってからは、全国の小中高では学校の授業がストップしています。

以前にも書きましたが、私が知っている私立の進学校では、オンライン授業を着実に推進してますので、やがて入試のシーズンになったときにオンラインで授業を受けていた人たちと、受けていない人たちとでは差が出て、後で必ず騒ぐことになるでしょう。

こうした現状に対して、東京や大阪の高校生たちが声を上げ始め、大阪にある高校の女子生徒が始めた署名活動には、すでに2万2000人以上の人たちが署名をしています。

もちろん9月に新型コロナウイルスがどうなってるかはわかりません。しかし、このまま授業を進めている学校があったりなかったり、夏休みに授業を積み込むなどで、入試や学年末を迎えるほうがよっぽど乱暴じゃないかなと私は思います。

だったら、9月に今年度の教育開始のスタートを整えて、子供たちがみんなが同じスタートラインに立つほうが私は大事ではないかなと考えます。

先ほど、古くて新しい議論と言いましたけれども、9月入学についてはこれまで何度も検討されてきました。昭和62年(1987年)には臨時教育審議会という政府の重要な機関が答申し、平成9年(1997年)には中央教育審議会が提言をし、そして、平成23年(2011年)には、東京大学が真剣に議論した結果、断念してきました

なぜそうした提言や議論が行われたのかというと、それはヨーロッパやアメリカ、中国などでは9月が新学期だからです。ですから、学生が留学するにしても、また留学生に来てもらうにも、あるいは教員が交流をしたり、共同で研究したりすることが非常にやりやすいからです。経済団体も4月の新入社員一括採用をやめる会社もあります。その背景にも、国際的な人材採用があります。

実は明治時代の日本の大学は9月入学だったんです。しかし、9月入学に移行するのも簡単ではなく、確かにいろいろなハードルがあります。特に入試や授業料、カリキュラムなどどうするかなどです。しかし、今までも意義があるから検討されてきたことですし、今は子供たちのスタートラインを整えるという意味で実施するチャンスだと思います。

9月入試の推進派である小池百合子東京都知事は「これによる混乱は生じると思うが、一方で、いま混乱は生じている。こういう時にしか社会って変わらないんじゃないかとも思うし、その一つとして、ありではないか」と言っています。

確かにその通りです。


編集部より:この記事は、前横浜市長、元衆議院議員の中田宏氏の公式ブログ 2020年5月12日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。