老いて輝く人

ひと月程前、「人間力・仕事力を高めるWEB chichi」に「なぜ若宮正子さんは82歳でiPhoneアプリを開発できたのか 若宮正子×小林照子」と題された対談記事がありました。その中に、美容家として60年以上活躍されている小林さんが下記の通り述べられ、若宮さんが「ぴったり同じです!私も全く同じことを考えていました」と応じられる箇所がありました。

やっぱり、年を重ねるごとに輝く人と逆に老いて衰えてしまう人がいると思うんです(中略)。その差は何かと考えてみると、未来を面白がることができるかどうかだと思うんです(中略)。それから、日本人が長く培ってきた伝統的なことに目を向けるのも大切です。(中略)技術の進歩を肯定的に受け止めながらも、古くから受け継がれている伝統を次の世代に伝える。この二つの視点を持つことが、年を取ってからの生き方かなと思います。

「馬齢を重ねる」という言葉がありますが、その反対に年を重ねる毎に輝く為には、私は好奇心とチャレンジングスピリットの2つこそが最も必要なものだと思っています。三国志で有名な曹操(そうそう:魏の始祖)の言葉、「烈士暮年(れっしぼねん)、壮心(そうしん)已(や)まず」ということです。曹操は、「雄壮な志を抱いた立派な男児は晩年になっても〝やらんかな〞という気概をずっと持ち続けるものだ」と言っています。

photoB/写真AC

人間誰しも皆公平に年一年、年を取って行きます。少なくとも肉体的には、確実に衰えて行くものです。しかし精神的に劣って行くかと言えば、必ずしもそうではありません。「あそこが痛い」「ここが痛い」とばかり言っていたら、鬱陶(うっとう)しくなるだけです。

曹操が言うような実に「壮心已まず」の気魄に満ちた気持ちを持って、「この夢を実現したい」「こんな仕事もしてみたい」と好奇心を失わず積極的に動くようにすべきでしょう。そうした若い元気な青年の気持ちでいますと、面白いもので体も元気になるのです。

「病は気から」と言いますが、年を取ると一段と気力が大事になります。肉体的な若さも勿論大事ですが、何よりも精神的な若さを如何に保って行くかが大切です。好奇心や情熱というのは、「気」によって維持されるものです。チャレンジングスピリットや好奇心が薄れてきたと感じる時には、曹操の「烈士暮年、壮心已まず」とか「老驥(ろうき:老いた駿馬)櫪(れき:馬屋)に伏すも、志千里に在り」とかといった言葉を思い出し、自らを奮い立たせるのです。

人間年を取れば取る程に、その時節相応の形で「生」を全うして行かねばなりません。50代では50代の、60代では60代の、80代なら80代の生き方を模索して行くということです。幾つになっても、精神的な若さは常に保ち続けなければなりません。


編集部より:この記事は、北尾吉孝氏のブログ「北尾吉孝日記」2020年5月13日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。