YouTube動画を観た、私の地元である佐倉市の市民の方から、お問い合わせをいただきました。動画は、駐ウクライナ大使などを歴任した元外交官で、作家の馬淵睦夫氏が4/26に公開したものです。
馬淵氏が動画の13分経過後に語っている
- いわゆる「汚染地域」から数百人の外国人が日本に入国している。
- その外国人の内訳は、法務省は公表していない。
- 公開すると、日本の国政政治家が困る裏事情があるからだ。
という内容は事実なのか、という趣旨の問合せでした。
確認のため、まず厚生労働省のサイトをみてみました。
厚労省の4/24発表では、患者数7,577(先数字、及び以下すべて当時)、内日本国籍の者5,694名、外国籍の者67人、他は「国籍確認中」とあります。つまり、4/24時点で1,816名の患者が「国籍確認中」だったわけです。
新型コロナウイルス感染症の現在の状況と厚生労働省の対応について(令和2年4月24日版)
この内容ですと、確かに「1,816人は外国籍で、何らかの政治的な裏事情があってひっそり日本に入国し、日本の保険を使って治療を受けているのではないか?」という疑いもありえます。
そこで、出入国在留管理庁に聞いてみたところ、4/1から4/12の期間、「特段の事情」により日本に上陸した外国籍の方の内訳が、法務省のサイトで5/1に公表されていることがわかりました。
新型コロナウイルス感染症に関する上陸拒否の措置に係る「特段の事情が認められ上陸を許可した人」の内訳について
詳細は上記ページを読んでいただければわかりますが、結論から言うと
- 4/1から4/12の期間の入国者は3,541人。
- 入国者のうち、国際線航空機のクルー等乗務員が8割弱(2,730人)。
- それ以外の方は「永住者」、「日本人の配偶者等」、「永住者の配偶者等」で約2割強(811人)。
となっています。確かに、上記「811人」の中には「個別の特異な事情がある外国人」という含みがありそうな属性も含まれますが、内訳の項目を見る限り、基本的には永住者や日本人の配偶者などが大多数と考えられます。
また、当該ページに「4月以降,特定の国籍を有する外国人を多数入国させるようになっているなどといった情報が広がっていますが,これは誤った情報です。」とあり、その理由も「入国を拒否する国の数(分母)が増えたために、特段の事情のある入国者(分子)が増えたに過ぎない」という趣旨の、説得的な理由も述べています。
「そんな言い訳、信じられるか!」ということになるともはや打ち手はありませんが、少なくとも省庁が数字をあげてここまではっきり「誤った情報」と言い切っている限り、嘘をついているとは考えにくいところです。
さらに、当該ページで確認できるPDFデータでは、国籍別の属性も確認できます。
「新型コロナウイルス感染防止に係る上陸審査の状況(速報値)」中の「特 段の事情が認められ上陸を許可した人」の内訳(速報値)
例えば中国に限って言うと、当該期間の日本への入国者数は295人で、内クルーは41人。つまり254人が「クルー以外」となっていますが、永住権を持つ中国人や、日本人の配偶者の中国人の数、つまり「特段の事情」として当然に入国が認められる属性の方々と考えれば「妥当値」だろうと考えます。
また、4月中の外国人入国者数の速報も、5/14に公開されていました。
このページの「速報値」の項目で「2020年 4月」をクリックすると、EXCELの資料がダウンロードできます。
内容を見てみると、4月一ヶ月間の日本への入国者総数は5,312人。内中国からのそれは716人でした。
先のPDFのデータをもとにすると、5,312人の内の8割弱がクルーと考えるのが妥当ですので、約4,000人は各国航空便のパイロットや客室乗務員ということになります。
つまり、4月の入国者のうち、航空機等のクルー以外の、「特段の事情」で入国した外国籍の方の総数は約1,300人程度と考えられます。
一ヶ月で1,300人とするならば、日本に永住権をもっていたり、日本人の配偶者であったりという「特段の事情」で当然に入国が認められる外国籍の方々の総数としては、私は納得できる数であると考えます。
上記を読んでも、すっきりしない方もおられるかもしれません。
しかし本件に関する限り、馬淵氏の動画の後ではありますが、法務省は統計値を公表していますし、その内容をみる限り「政府の陰謀」の影があるようには、私には思えませんでした。
皆さまはどうお考えになるでしょうか?