韓国慰安婦問題 その牙城のひび割れ

岡本 裕明

日韓関係を悪化させた一つの問題が慰安婦問題であります。私の知る限り、そもそもは日本から火が付いたのですが、それを韓国側が大きくした流れであります。その受け皿的存在である韓国挺身隊問題対策協議会(挺対協)は1990年に発足、慰安婦問題に取り組む過激な団体として知られています。その後、名前を変え、「日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯」(正義連)となっており、この毒々しい名称からしても目的意識が明白であることは自明の理であります。

5月13日、資金流用問題の中で開催された正義連恒例の「水曜デモ」(KBSニュースより)

さて、本来であればこの正義連は元慰安婦と共に戦い、日本を徹底的に糾弾するという立場なのですが、この前理事長で現与党議員である尹美香(ユン ミヒャン)氏が元慰安婦で中心的存在でもある92歳の李容洙(イ ヨンス)さんから「だまされ続けた!」と切れられ、正義連の活動資金の扱いに不正があったのではないかと韓国では大きなニュースになっています。

様々な暴露報道が出ていますが要は正義連は誰のための正義だったのか、さっぱりわからないというのが趣旨ではないかと思います。過去30年、元慰安婦を利用して支援金や寄付金を各方面から募りながら実はそのお金は元慰安婦のために使われず別目的で使われたのではないか、というわけです。元韓国大使の武藤正敏氏は「(正義連は)慰安婦問題が自らのレゾンデートル(存在意義)」と断じています。

では正義連とは何か、でありますが、私から見ると非常に質の悪い元慰安婦と政治を利用して世論をかく乱させる思想家グループという位置づけであります。そもそも正義連は北朝鮮側の慰安婦問題組織で92年に組織された「朝対委」と共闘することが約束されています。実体としては慰安婦問題にとどまらず北朝鮮の意を受けて協力を示す北との癒着団体であり、韓国の情報院も目をつけています。

更に言えばその正義連の前理事長で尹美香議員のご主人とその妹は93年に日本で北朝鮮のスパイと接触したとして逮捕、有罪が確定しています。また、妹のご主人も北朝鮮のスパイとの接触で逮捕されています。

尹美香氏(ツイッターより)

その正義連の中心人物である尹美香議員は正義連理事長時代に不正な資金流用があったのではないかとされ、例えば正義連が購入した慰安婦のための土地建物に長年、尹氏の父が管理人という名目で一人で住んでいたとか、娘のアメリカ、UCLAへの留学資金に使ったのではないかなど韓国特有の「疑惑のデパート」状態になっております。

ただし、現時点で与党は尹議員を守る姿勢を取っています。それは思うに韓国政府が正義連を否定することになれば与党が日本政府に取ってきた強硬姿勢の本質が問われる可能性があるからでしょう。

韓国としては一丸となって戦ってきた対日本への圧力とロジックが崩れるどころか、世論の風向きが変わってしまう公算すらあります。

慰安婦問題については私も長年直接的に接触してきた中でずっと思ってきたことは「なぜ、韓国だけがこの問題を特に重視するのか?」と「なぜ、日本軍の慰安婦問題だけを特別に取り扱おうとするのか」であります。慰安婦そのものは戦争時代はどこでもあったわけでそれ自体が珍しいものではありません。日本軍の戦いにおいても慰安婦の主流は日本人でそれ以外に韓国を含む他国の人もいたのですが、同じ境遇にいながら日本からはほとんど声が出ないのであります。

つまり、もともと韓国国内ですら話題にならなかった慰安婦問題を正義連が30年間、テンションを上げる活動をし続けてきたともいえるわけでこの団体こそ、ストーリーテラーとして世論をかく乱させてきたといっても過言ではなく、韓国現与党は人心を煽るため、更にそれを利用してきたのが現状であります。

慰安婦問題は韓国内で学者たちが異論を唱える等、風向きが変わる傾向があります。今回の問題はあくまでも尹議員と李容洙さんの確執なのかもしれませんが、韓国保守系には頑張ってもらいたいものであります。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2020年5月19日の記事より転載させていただきました。