アフターコロナを考える -キャッシュレス決済-

中田 宏

昨年10月に消費税が8%から10%に増税されました。

増税時の経済対策には、幼児教育・保育の無償化、軽減税率、ポイント還元、プレミアム付き商品券、高等教育の無償化、住宅ローン減税の拡充、自動車購入時の税負担軽減などがありました。その中でも最大規模の経済対策と言われたのが、昨年10月の増税時から2020年6月までの期間限定で始まったキャッシュバック・ポイント還元です。

これは、買い物をした際のキャッシュバック・ポイント還元なので、やはりみんな自分事ですね。ただし、一つだけ条件がありました。その条件とはキャッシュレス決済をした場合でした。私もクレジットカードの明細書の中に、キャッシュレス還元というのを何回か見ましたね。

キャッシュレス決済の比率について、随分前にお伝えしましたけれども、日本は非常に低かったです。恐らく、これが一番最新のものだと思いますが、2017年のデータでも、日本は21.4%、韓国は97.8%、ロシアは78.3%、シンガポールは57.4%、アメリカは45.5%、フランスは42.7%となっています。日本より低いのはドイツの16.3%ぐらいです。

この数字が低いから遅れている、高いから進んでいるというのとはちょっと違います。中国をはじめとした途上国などではお札が汚いとか、国の貨幣に信用がない、など様々な理由でキャッシュレス化が進んできたという背景もあります。

我が日本政府の財務省や国税庁、税務署などはキャッシュレス化を進めたかったでしょう。なぜならば、お金の流れがわかり、消費者動向などのデータも取りやすくなります。その一方で、誰が何にいくら使ったのかという、個人情報も把握されることになります。ですから、増税の時にキャッシュレス決済で還元という策に出たわけです。

実はここにきて今、キャッシュレス化がじわじわと進んでます。その要因は何かというと、我々の生活を一変させた新型コロナウイルスです。民間の調査によれば、新型コロナウイルスによって約2割の人が「支払い方法に変化があり」と答えています。そしてその変化で顕著なのは何かというと、現金の利用が減った人が73.6%、すなわち、クレジットカード、電子マネー、デビットカード、スマホ決済などが増えたということです。

なぜそうなったのか、「現金の受け渡しをしたくない」「買い物に行って店員さんと会話をしたくない」すなわち、今よく言われている非接触ということです。さらに、外出自粛によってATMに現金を下ろしに行かない、その裏返しが巣篭もり消費ということで、eコマース、ネットショッピングというのが利用されています。ですから、その多くがやはりキャッシュレス決済ということになります。

そして、私がびっくりしたのはこの調査結果です。


調査結果を見ると、世代に関係なくキャッシュレス決済が浸透しているということです。全体でも91.6%の人がキャッシュレス決済を利用していますけれども、20代はやはり高く94.5%でした。私も属する50代では93.6%です、70代でも84.2%です。

いつになるかわかりませんが、新型コロナウイルスの感染が収束したとしても、こうした行動様式というのはある程度定着するでしょう。巣篭もりが終わったとしても、ネットショッピングなどでしていたことが、そのまま店舗に戻るということではないわけです。当面は感染を抑制した上での経済活動、withコロナですから、いろいろなサービスがより豊富に、より便利になっていき、キャッシュレス化が進んでいくことになるでしょう。


編集部より:この記事は、前横浜市長、元衆議院議員の中田宏氏の公式ブログ 2020年5月19日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。