なぜ株価は高くなったのか?

ニューヨーク証券取引所(flickr)

コロナショックの最安値からダウは35%、カナダTSXもほぼ35%、日経平均は27%程度上昇しています。底は3月20日前後でした。まさに台風が吹き荒れ、最悪の時だったと思いますが、その3月20日付ブログで「私は個人的にこつんと感じました。マーケットの底は近いかもしれないと」と述べました。多くの異論がありましたが結局、その後、ほぼ一本調子の回復を辿っていっています。

その当時、私はもう一つ強く申し上げたことがあります。これは経済のシステムを壊したわけではない、金融もしっかりしている、だから経済的にはPause(一時停止)であると。リーマンショックの時は経済というマシーンが壊れたのですが、どこが壊れたか、何が原因なのか、どこまでその影響があるかわからなかったのが最大の衝撃でした。今回は経済マシーンの電源を落としただけです。

電源を止めるというのはあらゆる方面に強烈な忍耐を求められますが、案外、工夫をしながらやりくりしてきたと思います。その間、各国政府は強力な金融緩和を行い、各種支援金を決定し、ありとあらゆる対策を講じています。これがじわじわと上昇する世界の株価の原動力であります。

もう一つ、原油価格の怪がありました。一時、マイナス40㌦/バレルという異常値を示しますがこれはほんの数時間だけのドラマでありました。何度も言うようにテクニカルな問題で一般の方に恐怖心を煽るべきものではありません。原油価格はNYマーカンタイル市場で現在30㌦台半ばとなっていますが、夏にかけて需要が増えやすい季節要因とアメリカのシェールオイルの供給が急速にしぼみ、次の掘削リグの資金手当てがつかないことから原油価格40㌦は単なる通過点となるはずです。

人の心理とは悪くなればなるほどもっと悪くなるという増幅がかかりやすくなります。その際、あり得ないほどの悪い材料を並べやすくなるものです。しかし、冷静になって考えてみれば経済の電源が止まっている以上にどう悪くなるのでしょうか?生産施設が壊されたとか、労働者が消えたわけではなく、すべてがそこで再開を待ちわびていたのだと考えれば嵐は必ず収まる、トンネルの出口は必ず来ると考えられます。

ではどんな銘柄も一様に上がるのかといえば今回は東証一部よりも小型株に分がありました。マザーズ指数は3月安値から既に8割以上も上昇するなど日本を代表する企業群に比べて身軽さがモノを言った点は見逃せません。特に重厚長大型や資産を抱え込む業種は厳しかったと思います。スペースジェットで苦しむ三菱重工はほとんど株価が戻りませんし、航空各社も戻りは浅く、スカイマーク社は再上場どころか強烈なキャッシュ流出に見舞われており、我慢大会状態になっています。

バフェット氏Twitter

その点からすれば株価の指標は高くなっていますが、ムラがあるわけでそこはよく見定めないと全然違うじゃないか、ということになります。

私は5月23日の「今週のつぶやき」で「バフェット氏の神通力が消えた」と述べましたが、日経がいみじくも25日付で「衰えるバフェット氏の手腕 指数に勝てず含み益も急減」という編集委員記事を掲載しました。これは何を意味するのか、といえば投資のスタンスが変わったという点です。今までのやり方ではダメだし、投資のメジャメント(尺度)は進化してきていると思います。

目先ですが、Cash is Kingが叫ばれ、現金化したそのお金をどう運用するか、再参戦しようという提灯マネーがつくと思います。ただし、どこの市場に、という前提がつくと思います。東証の投資家部門別売買状況をみると海外投資家の資金流出は強烈でそれを個人投資家が支えているというあまり見ない形になっています。個人好みの新興市場が活況だという理由はここでも見て取れます。

くだんの外国人投資家のマネーはどこに向かっているのかですが、やはりアメリカではないかとみています。金利が地を這うような水準でGAFAなどには有利な風が吹き、今後、指数的な物価上昇は支持されやすく、トランプ大統領は大統領選に向け、国民が喜ぶ株価への刺激は行うはずで大暴落したアメリカのREIT関連が業績回復に伴い配当の復活、増配をすれば安定化してくるとみています。

金融緩和というマネーの津波は個人投資家は一瞬に飲み込まれるほど巨大化しています。その強大な勢力はえさを求めて地球上をさまよい続けており、その波に乗れるかどうかがポイントだったと思います。

今後については皆さんのご判断となりますが、日本に関しては政権の不安定感が露呈し、外国人投資家は嫌がるかもしれません。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2020年5月26日の記事より転載させていただきました。