日本経済は、FRBに生殺与奪の権を握られた

藤巻 健史

FRB(Wikipedia)

実はこの4か月で膨らんだ日銀のバランスシート46兆円だが、資産サイドでは「外国為替勘定」の増加が24.0兆円(6.7兆円->30.7兆円)、負債サイドでは「その他預金」の増加20.5兆円(32.3兆円―>52.8兆円)がめだつ。これは思うに為替スワップ協定(ドルをFRBから借り、円をFRBに預託する)を実行したせいだと思われる。

3月半ばには米国外でドル需要が急増し、ドルの調達懸念でパニックが起きた。いわゆるジャパンプレミアムが2.5%前後に急騰した。それをこの為替スワップ協定で日銀がドルをFRBから借り邦銀に過疎出すという形でなんとかパニックを抑え込んだわけだ。

この協定が実行されなければ、今でもドル獲得のためのパニックが続き、メガバンクもドル資産の売却に走ったり(=米ドル金利の急騰)、ドル市場のからの借り入れから円売り/ドル買い(ドル/円の急騰)をしてドル調達を図ったと思われる。要は、世界中でドルの潜在需要はものすごく強いということ。

より重要なのは、日本は「FRBに金融システムの生殺与奪の権を握られた」ということだ。今後、FRB(or米国)が為替スワップを破棄すると言ってきたら、日本の金融システムはイチコロだ。本来、為替スワップ協定は「自国通貨の通貨危機」に陥いった国が相手国に相手通貨の供給を一時的に依頼する協定のはず。

在日米軍基地や日米安保によって、米国は「日本の生殺与奪の権」を握っていると言える。それゆえに日本は、米国の無理な要求にも最終的にはYesといわざるを得ない。日米安保を破棄されたり、在日米軍が撤退されたら困るからだ。

為替スワップ協定は金融面での日米安保と同じだと思う。FRBに廃棄されたら、日本の金融システムはクラッシュだ。安保や在日米軍の場合は、今まで多くの論争、選挙を経て、日本国民が、それを選択していると私は理解しているが、為替スワップ協定はサラっと決められた。

たしかに中央銀行同士の協定だから国会審議等は必要ないのかもしれないが、「日本経済/日本の金融システムの生殺与奪の権」をFRBが握ったと思えるのに、こう軽々しく結んでよかったものだろうか?

私自身、勉強不足で「日本経済の生殺与奪の権」を握られたとまで断定していいのか自信が無いので、ここでは疑問として提唱しておきたい。ドルは世界の基軸通貨としての地位をこの協定でより健固にしたとは、最低限言える。