『十八史略』に「治世の能臣、乱世の奸雄(かんゆう)」という言葉があります。三国志で有名な曹操(そうそう:魏の始祖)は「乱世の奸雄」と称されたわけですが、基本的に此の治世と乱世とで指導者たる人物は結構変わってくると思います。
今のコロナの状況は、どちらかと言うと乱世に当たります。例えば、現指導者の中で今回圧倒的ナンバーワンの評価を得ているのは、大阪府の吉村洋文知事でしょう。実際、吉村知事は、未だ44歳と若いものの非常に立派な仕事をされています。だから大阪の現況は、非常に良いのだろうと思います。
ひと月ほど前、『激突 吉村知事VS西村担当相 休業要請解除巡り「権限は国か知事か」』といった議論が一時ありましたが、私自身は、乱世においてはより多くの自治を夫々の地方公共団体の長に与えるべきだと思っています。国による様々な関与に依らず、地方自治体自らの判断の中できちっとした対策を打って行くのです。
その時大事になるのは、資金であります。本日成立する見通しの2020年度第2次補正予算案に計上された「予備費」10兆円につき、麻生太郎財務大臣は8日の財政演説の中で「まず、第二波、第三波が襲来し、事態が大幅に深刻化した場合には、少なくとも五兆円程度の予算が必要になると考えているところ」と言われた後、次の通りその内訳に触れられていました。
ある程度の幅をもってみる必要はありますが、第一に、雇用調整助成金など、雇用維持や生活支援の観点から一兆円程度、第二に、持続化給付金や家賃支援給付金など、事業継続の観点から二兆円程度、第三に、地方自治体向けの医療・介護等の交付金など、医療提供体制等の強化の観点から二兆円程度が必要になるのではないかと考えております。
そしてまた、「今後の長期戦の中で(中略)、どのような事態が起こったとしても、迅速かつ十分に対応できるよう、万全を期すため、更に五兆円程度の予備費を確保することとしたもの」のようですが、此の予備費については寧ろ「第二波、第三波が襲来し、事態が大幅に深刻化」する前に、事の実相を最もよく理解している地方公共団体の自由裁量の下に充てるべきものだと私は考えます。
今回の第1波を経てその不足が明らかとなった、例えば病院や医師あるいはECMO(体外式膜型人工肺)や人工呼吸器等々の全てに関し、各都道府県がチェックアップし夫々の緊急性の有無を明示した上で国にきちんと提出するのです。第2波・第3波が来る前に、そうした足りないところに予備費を充て、現場の自由裁量で可能な限り手当しておく必要があるのではないかと考えます。
こうした資金の供給というのは、国が全都道府県向けに行わねばなりません。例えば今回の『感染者集計ミス、東京都連発 「ファクス1台に数百枚」』といった、脆弱な情報収集の有り様は論外です。IT活用の環境構築により全体システムを刷新し、手書きの世界から解放すると共に、手書きのものはOCR(光学式文字読取装置)で全て見る等するのです。時宜を得て正確なデータが集められるよう、早急な抜本的見直しが求められます。
第2波が来る前に(来ないかもしれませんが)、上記のようなことを今やることが必要だと思います。上記した第2波・第3波襲来時というより、「備えあれば憂いなし」であり、「後回しでやってどうなるの?」と聞きたくなります。あるいは、先月23日に漸く全国「配布中」となった「アベノマスク」についても、時機を逸した上に色々な欠陥が指摘される中で未だ配布を続ける意味が全く見出せません。
もっと言うと、『持続化給付金「電通のトンネル法人に769億円で発注」で経産省との癒着疑惑』の類は、正に今迄も為されてきたことでしょう。最早そうした愚かな形で我々の血税を浪費するのは、是非とも止めて貰いたいのです。来年1月のダボス会議のテーマが「グレート・リセット(The Great Reset)」であるように、此の乱世においてリセットせねばならない事柄が我国にも数多あるように思います。
編集部より:この記事は、北尾吉孝氏のブログ「北尾吉孝日記」2020年6月12日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。